(…前編「巨匠ヴィム・ヴェンダースが『ハリポタ』作曲家と組んだ異色のドラマ」より続く)
【映画を聴く】『誰のせいでもない』中編
すべてをさらけ出したシャルロットの存在感
本作『誰のせいでもない』は、雪に覆われたカナダのモントリオール郊外で起きた“誰のせいでもない”事故によって運命を大きく左右される1人の男と3人の女の物語だ。主人公のトマスを演じるジェームズ・フランコは、サム・ライミ監督版の『スパイダーマン』のハリー・オズボーン役でよく知られているが、本作のトマスと同じく作家としての顔も持っている。2014年のジア・コッポラ監督作品『パロアルト・ストーリー』は、彼の原作を映画化したものである(準主役として出演もしている)。
物語で描かれる12年の間にトマスが深く関わる3人の女性は、シャルロット・ゲンズブール、レイチェル・マクアダムス、マリ=ジョゼ・クローズがそれぞれ演じている。中でもこのコラム的にスポットを当てたいのは、トマスが雪の日に起こした事故に関わった2人の男の子の母親、ケイトを演じるシャルロット・ゲンズブールだ。
以前『ニンフォマニアック Vol.1/Vol.2』の記事(「芸術か猥褻か。映像も音も刺激的な『ニンフォマニアック』」)でも触れたが、その出自のキャッチーさも手伝って、彼女はもともと映画では女優というより“シャルロット・ゲンズブール”というジャンルとして扱われることが多かった。10代前半から女優として活動を始めているが、『なまいきシャルロット』や『シャルロット・フォー・エヴァー』『他人のそら似』『僕の妻はシャルロット・ゲンズブール』といった出演作ではすべて本人役を演じている。その流れを大きく変えたのがトリアー監督の『アンチクライスト』であり『メランコリア』であり『ニンフォマニアック Vol.1/Vol.2』であったわけだ。
トリアー監督との仕事を経てすべてをさらけ出したシャルロットは、本作ではトマスに対して複雑な感情を持たざるを得ない難しい役どころを、ナチュラルかつ大胆に演じている。彼女の演じるケイトの存在が、あまりに小説的で非現実的ですらある本作の脚本にリアリティを与えていることは間違いない(後編に続く…)。
(後編「ド変態の父とロリータな母をもつ音楽サラブレッドの活動に再注目!」に続く…)
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