【映画を聴く】『ANTIPORNO アンチポルノ』/前編
枠組みをぶっ壊そうという気概に満ちた作品
鮮やかな黄色や赤で塗り固められた、生活感のまったくない部屋。そこに置かれたベッドの上で穿きかけの下着をだらしなく太腿に絡ませてうつ伏せになっている女は、小説家兼アーティストとしてブレイク中の京子。マネージャーの典子の伝える仕事をこの部屋に籠もって分刻みで片づける毎日を送っている。
・「脱ぐのは園監督作品の主演で」有言実行を果たした心意気!『アンチポルノ』冨手麻妙インタビュー
『新宿スワンII』も好調な園子温監督の『ANTIPORNO アンチポルノ』は、順次公開中の「日活ロマンポルノ」リブート・プロジェクト5作の中でもインパクトという点で突出した、いかにも園監督らしい作品に仕上がっている。『愛のむきだし』や『地獄でなぜ悪い』、『TOKYO TRIBE』などで展開してきた現実と虚構の交錯する世界観を、極彩色の密閉空間に凝縮。この冒頭のシークエンスだけでも“芸術か? ワイセツか?”という、クラシック・ロマンポルノを語る上で避けて通れない論争を再燃させるに十分な吸引力を持っている。
そもそも日活ロマンポルノは、レーベルであってジャンルではない。今回のリブート・プロジェクトで言うなら「総尺が80分前後であること」「10分に1回は濡れ場があること」「製作費は全作一律であること」「撮影期間は1週間であること」「完全オリジナル作品であること」「ロマンポルノ初監督であること」という6つの条件をクリアしていれば何をやってもアリなわけだが、中でも本作の自由度は圧倒的。他の5作品がロマンポルノの“ロマン”というワードに多かれ少なかれオマージュを捧げているのに対して、本作はタイトルを見ればわかる通り、“ロマン”はもとより“ポルノ”すらも否定するところから組み立てられている。元来パンクな存在だったはずのロマンポルノという枠組みを再度ぶっ壊そうという気概があちこちに見て取れる。
(後編「生理的にムリ、という人がいて不思議ではない〜」に続く…)
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