【映画を聴く】『光』前編
光”のない映画とは?
映画を“聴く”ことの本質に迫った河監督の最新作
最大のヒット作となった『あん』から2年。河直美監督の最新作『光』は、視力を失いつつある写真家の雅哉(永瀬正敏)と、映画の音声ガイドを仕事とする美佐子(水崎綾女)の心の通い合い、すれ違いを描いたラブストーリーだ。この記事を書いている5月24日現在、第70回カンヌ国際映画祭の公式上映の好反響を伝えるニュースが続々と入ってきており、最高賞のパルムドール受賞が大いに期待されている。
・役作りのために男女が同居!? 河瀬直美監督のドS的演出に出演者たちも戦々恐々
ロケ地は、河監督の故郷であり制作の拠点である奈良。永瀬と水崎は、クランクインの数週間前からそれぞれの演じる役の住むマンションで実際に寝泊まりして役に同化することを求められるなど、本作でも制作スタイルには河流が徹底されている。いつカメラが回っているのか判然としない状況の中で、役者は演技ではなく、登場人物そのものとして映画の中で生きる様子を監督に提示しなければならない。
目の不自由な方のための音声ガイドや耳の不自由な方のための字幕や手話、外国の方のための多言語字幕や音声の提供といった映画のバリアフリー化は、少しずつではあるものの、日本でも普及しはじめている。たとえばスマホアプリの「UDCast」をダウンロードして対応コンテンツを視聴すると、端末のマイクが音声を拾うことで音声ガイドや日本語字幕、外国語字幕を取得することができる。
特に音声ガイドは対応作品がこのところ増えており、最近の作品だけでも本作『光』のほか、中村義洋監督『忍びの国』、小林政広監督『海辺のリア』、神徳幸治監督『ピーチガール』、月川翔監督『君の膵臓をたべたい』、降旗康男監督『追憶』、静野孔文監督『名探偵コナン から紅の恋歌』など、多くの話題作で音声ガイドを取得できるようになっている。
(後編「サウンドデザインにも生々しさを求める河監督の流儀」に続く…)
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