【映画を聴く】『ダリダ あまい囁き』前編
波乱の末に自殺した仏の国民的歌姫
フランスの国民的歌姫、ダリダの生涯を描いた『ダリダ あまい囁き』が公開される。およそ事実とは思えないほど数奇な人生を歩んだ人だから、この映画もまたショッキングなエピソードの連続で、何とも言えない後味を残すものになっている。副題の「あまい囁き」は、1973年にリリースされて日本でも大ヒットしたアラン・ドロンとのデュエット曲のタイトルから取られたものだ。
・誰もが憧れる“あの時代のニューヨーク”の香り! 映画好きならたまらないビタースウィートな物語
キャリアを通して2,000曲をレコーディングし、うち70枚がゴールド・レコードに認定。世界で通算1億7,000万枚ものレコードを売っている人なので、彼女が歴史に残る大スターであることは否定しようがない。しかし、いまの日本で彼女がフレンチ・ポップ的な文脈で語られることはほとんどないし、「あまい囁き」にしても中村晃子&細川俊之らによるカバー曲の方がよく知られていたりするので、「あの伝説の……」という紹介をしてもピンとこない人が多いのは仕方ないだろう。
本作は、華やかなスポットを浴びる歌手=ダリダではなく、ひたすら愛を求めて彷徨うひとりの女性=ヨランダ・クリスティーナ・ジリオッティの姿を赤裸々に描くことに主軸を置いている。一緒に暮らした3人の男性すべてが次々と自殺し、自身も1987年に「人生に耐えられない。許して」という遺書を残して57歳で自殺。その波乱に満ちた生涯を巻き戻す形で物語は進んでゆく。
・後編「生涯“消費”され続けた世界的歌姫、その切ない物語に重なる光景とは?」
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