【週末シネマ】『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』
名優たちが勢揃いの大ヒットミュージカル続編
エーゲ海を望むリゾートを舞台に、ABBAのヒット曲をメリル・ストリープを始めとする名優たちが歌い踊るミュージカル映画『マンマ・ミーア!』の続編『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』。今回はストリープの演じたドナの一人娘・ソフィ(アマンダ・セイフライド)が中心。ギリシャのカロカイリ島で母との念願だったホテルのオープンを控えたソフィと、島へ単身やってきたドナの若き日の物語が交錯する展開だ。
・「バカになって踊りまくるのみ!」『マンマ・ミーア〜』ピアース・ブロスナン インタビュー
ちょうど10年前に製作された『マンマ・ミーア!』はドナと親友2人(クリスティーン・バランスキー、ジュリー・ウォルターズ)、ソフィの父親候補3人(ピアース・ブロスナン、コリン・ファース、ステラン・スカルスガルド)という、大人たちの堂々たる存在感と弾けたユーモア・センスが強烈な印象を残した。セイフライドが演じるソフィとスカイ(ドミニク・クーパー)という若い2人の恋の成就も花を添える構成だったが、今回はドナたちについても彼らの若き日の物語がメイン。『シンデレラ』『ベイビー・ドライバー』のリリー・ジェームズが迫力の歌唱力とダンスで、名門大卒の才媛ながら自由奔放なドナをパワフルに演じている。ソフィの父親・サム(ブロスナン)の若き日を演じたジェレミー・アーヴァイン(『戦火の馬』)以下、大人組の20代の姿を担った若手たちは外見も含めて各々の特徴をよくとらえて手堅く演じている。
前作のラストで挙式したソフィとスカイにはすれ違いが生じ始めている。ホテルビジネスを学ぶためにニューヨークに滞在し、新たな人生の可能性に心が動いている夫と、生まれ育った島で夢を叶えたいソフィには新たな局面も訪れ、2人の苦悩も描かれる。演じているセイフライドとクーパーは前作での共演をきっかけに実生活でもカップルになったが、その後に破局を迎えた経緯があり、ゴシップ好きはつい余計なことに気を取られそうになるが、息の合った2人の芝居はそういう邪念を吹き飛ばすものだ。
老若問わず、キャストの熱演が生む高揚と風光明媚なギリシャの風景が、映画の持つ祝祭感をさらに盛り上げる。
オリジナルキャストの勢ぞろいに加えて、今回はシェールとアンディ・ガルシアが新たに加わった。ホテル支配人という以外は謎に包まれたセニョール・シエンフエゴス(ガルシア)のミステリアスな佇まいも気になるが、圧巻はやはりソフィの祖母・ルビーを演じるプラチナブロンドのシェールだ。言うまでもなく、『月の輝く夜に』(87)でアカデミー主演女優賞を受賞したオスカー女優であり、60年代から歌手としてヒット曲を連発し、グラミー賞も受賞している今も現役のエンターテイナーだ。
俳優陣のパフォーマンスはもちろん文句無しだが、シェールの歌は別次元にあり、歌唱という芸術について考えさせられる。名女優、大女優の代名詞であるストリープは美しい歌声をしていて、彼女とセイフライドが繰り広げる母娘の絆の物語で泣かせるのだが、歌が大きな意味とパワーを持つ本作においては、シェールに敵う者はいない。ストリープとは1983年の『シルクウッド』以来の共演となった、全員総出の豪華なフィナーレは必見。(文:冨永由紀/映画ライター)
『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』は8月24日より全国公開。
冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。
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