母からの拒絶、そしてその“代わり”を探し続けた壮絶人生を描く衝撃ドキュメンタリー

#エリック・クラプトン#映画を聴く

『エリック・クラプトン〜12小節の人生〜』
(C)BUSHBRANCH FILMS LTD 2017
『エリック・クラプトン〜12小節の人生〜』
(C)BUSHBRANCH FILMS LTD 2017

【映画を聴く】『エリック・クラプトン〜12小節の人生〜』前編
まさかこれほどとは…衝撃的な人生を紐解く

サブタイトルにある“12小節”とは、ブルースの基本になる尺のこと。その12小節でひと回りするコード進行をくり返し演奏しながら、シンガーは自身の孤独や悲哀、苦悩について歌う。

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エリック・クラプトンの音楽的ルーツにブルースがあることは承知しているし、その半生が波乱万丈だったことも何となく聞いてはいたけれど、まさかこれほどとは……。『エリック・クラプトン〜12小節の人生〜』は、たとえば1992年の大ヒットアルバム『アンプラグド』やベイビーフェイスと組んだシングル「チェンジ・ザ・ワールド」以降の“再生”した彼の姿しか知らないファンなら、そう驚かずにはいられないエピソードばかりの衝撃的なドキュメンタリーだ。

親友のジョージ・ハリスンの妻であるパティ・ボイドと恋に落ち、彼女を奪うために名曲「いとしのレイラ」を書いたものの、ついにその恋は報われなかったこと。“ギターの神様”と崇められても人を信じることができず、酒とドラッグに溺れる数年間を過ごしたこと。そして最愛の息子を4歳にして悲劇的な事故で失ったこと。クラプトンの70余年の人生は、到底ひとりの人間が一生のうちで経験するものとは思えないほど多くの悲しみや苦しみの連続だったわけだが、中でも彼自身にもっとも大きな影を落としているのが、母親からの“拒絶”である。

ゆきずりの恋で生まれた自分を息子と認めず、祖父母に育児を丸投げして出て行った母と、その“代わり”になってくれる人を探し続ける、出口の見えない女性遍歴。こういったエピソードは2008年に日本語訳も刊行された『エリック・クラプトン自伝』ですでに本人が率直に書き綴っているが、クラプトンと25年来の親交を持つリリ・フィニー・ザナック監督は彼の人生そのものを一曲の“ブルース”として捉え、それらを歌の断片のようにスクリーンに散りばめていく。いっぽうでクラプトンの音楽的な功績もクロノロジカルに手際よくまとめられており、ヤードバーズ、ジョン・メイオール&ブルースブレーカーズ、クリーム、デレク&ザ・ドミノス、ブラインド・フェイス、ソロと続く彼の音楽探求の過程を、新しいファンにもわかりやすく提示する仕上がりになっている(後編へ続く…)。

後編「絶望からの再生、ギターフェスでの感動スピーチもファンのツボを刺激しまくる!」

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