圧巻のヴィジュアルで現代社会とリンクする物語を描く『デューン 砂の惑星 PART2』

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『デューン 砂の惑星PART2』
『デューン 砂の惑星PART2』
(C) 2024 Legendary and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.
Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories.
『デューン 砂の惑星PART2』
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ティモシー・シャラメ主演のSF超大作、前作はアカデミー賞6冠受賞

【週末シネマ】第94回アカデミー賞で撮影賞や美術賞、作曲賞など6部門を受賞した『DUNE/デューン 砂の惑星』の続編『デューン 砂の惑星 PART2』が公開された。フランク・ハーバート原作のSF小説「デューン砂の惑星」を、『メッセージ』『ブレードランナー2049』などのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が壮大なスケールで映画化する2部作のPART2は、紀元10191年の惑星アラキスが舞台だ。

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40年前のデヴィッド・リンチ監督作『デューン/砂の惑星』の上映時間が137分だったのに対して、ヴィルヌーヴは同じ物語を2部作として倍以上の時間をかけて描く。前作でたっぷり尺を費やして砂の惑星の世界と相関図を語り、今回はティモシー・シャラメが演じる主人公ポール・アトレイデスの覚醒と宿敵・ハルコンネン家との戦いの物語は大きくうねり出す。

前作で、アトレイデス公爵家は皇帝の命を受けてアラキスに移住するや、以前から同地の香料(スパイス)採掘で莫大な財を成した邪悪なハルコンネン男爵家の襲撃を受ける。陰謀を図ったのは皇帝と男爵家だった。ポールは最愛の父・レト公爵や頼れる仲間を亡くし、母のレディ・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)と共に先住民族フレメンの人々のもとに身を寄せる。

『デューン 砂の惑星 PART2』

主人公と恋に落ちる戦士をゼンデイヤが情熱的に演じる

本作では、当初フレメンたちから疑いの目を向けられたポールが彼らの砂漠でのサバイバルや戦い方を学び、徐々に信頼を勝ち取り、やがては彼らの指導者として成長していく。その過程で彼はフレメンの戦士チャニ(ゼンデイヤ)と恋に落ちていく。チャニは、未来が視える特殊な能力を持つポールが以前から繰り返し夢の中でその姿を見ていた人物だ。

ポールに砂漠で生きる術を教え、そのままの彼を愛するチャニは、フレメンのリーダーであるスティルガー(ハビエル・バルデム)や周囲がポールのことを長年待ちわびた救世主と崇めるようになっても、彼への態度や自身の信念を変えない。ゼンデイヤは強い意志と情熱を持ち、観客が最も共感できる立ち位置からポールを見つめるチャニを演じる。彼女の視点から物語を解釈するのも興味深い。

『デューン 砂の惑星PART2』

シャラメは前作からの主人公の成長を丁寧に表現

特殊能力を持つ女性の組織「ベネ・ゲセリット」の一員である母ジェシカの血を引き、生まれながらに選ばれし者であるポールは、フレメンに伝わる救世主伝説が「ベネ・ゲセリット」によって植えつけられたものと知りつつ、彼らを率いてハルコンネン家を倒そうと立ち上がる。前作では無邪気な王子のようだったポールの成長をシャラメは丁寧に表現していく。ナイーブな少年が砂漠で鍛えられ、救世主と崇められ、本人もその覚悟を背負う。砂丘でチャニと愛を深めながらも、父の後継者としての使命も片時も忘れずにいる。

血統や栄誉に取り憑かれることの虚しさや悲劇性も見える

ヴィルヌーヴはヨルダンやナミビアの実景とCGを融合させ、さらに音響の力も借りて、息を呑むように美しい砂の惑星と砂漠に潜む巨大な砂虫(サンドワーム)の脅威をリアルに映し出す。圧巻のヴィジュアルと音響による表現で観客を圧倒しながら、現代社会にも投影できるテーマに満ちた物語を紡いでいく。

『デューン 砂の惑星 PART2』

IMAX撮影による壮大なアラキスの砂漠の風景やポールとフレメン族の連携、ポールの内面の葛藤には名作『アラビアのロレンス』(1962年)の影響を色濃く感じる。

ポールとフレメンの関係は、第一次世界大戦中にアラブの部族を率いてオスマン帝国からの独立闘争を支援するロレンスの行動に重なる。異文化に魅了されて身を投じるが、亡き父の後継者としての立場やルーツへの忠誠と、新たに仲間となった人々への忠誠の間に引き裂かれながら、ポールは一つ一つ決断を下していく。

そこには宗教や植民地主義が絡み、現実の世界と奇妙なほどにリンクする。正義のため、大切なものを守るための戦いがある一方、欲のために相手を操ろうとする者、あるいはただ弱者を傷めつけて愉しむ者。この映画に描かれる大半のものをたった今、目の当たりにしながら私たちはこの世を生きている。ポールたちとハルコンネン軍の熾烈な戦いが繰り広げられる中、ほんの一瞬だけ画面に映る戦士ではない人々の姿が胸に刺さる。

ポールがヒロイックになればなるほど、スティルガーたちの心酔が深まるほど、ヴィルヌーヴはその興奮にほんの微かな違和感を漂わせる。誇りは失ってはならないものだが、血統や栄誉に取り憑かれることの虚しさや悲劇性が見える。それも本作の魅力の一つだ。

オースティン・バトラーが狂気の怪演

本作で初登場するハルコンネン家の跡取り、フェイド=ラウサを演じるオースティン・バトラーも強烈だ。男爵の甥で、傲慢で嗜虐的なフェイド=ラウサの恐ろしいほどの狂気を怪演し、シャラメに一歩も引けを取らないスターの華やかさも振りまく。ポールとの決闘シーンはクライマックスの一つだ。他に、物語の語り部を務める皇帝の娘・皇女イルーランをフローレンス・ピュー、父である皇帝シャッダム4世をクリストファー・ウォーケンが演じる。

オースティン・バトラー、フローレンス・ピューも出演。その他の場面写真はこちら

配信作品をスマホやコンピュータで見るのが鑑賞のスタンダード仕様になりつつある今、あえて可能な限りの大画面と大音量で見るべき作品だ。21世紀の映画という現象を体験するのに最適解として勧めたい。(文:冨永由紀/映画ライター)

『デューン 砂の惑星PART2』は、2024年3月15日より全国公開中。

全宇宙の命運をティモシー・シャラメ&ゼンデイヤが握る/映画『デューン 砂の惑星PART2』予告編