保守派大物のセクハラ実話はじめ、格差社会や耐久レース描いたオスカー候補作も続々。2020年の話題作
#1917 命をかけた伝令#ジュディ 虹の彼方へ#ジョジョ・ラビット#スキャンダル#ナイブス・アウト/名探偵と刃の館の秘密#パラサイト 半地下の家族#フォードvsフェラーリ#2020年
2020年は年明けから、今年の賞レースを賑わせる作品が続々公開される。
1月10日公開の『パラサイト 半地下の家族』は韓国のポン・ジュノ監督が昨年5月のカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝いた作品。日本では昨年末から一部劇場ですでに先行公開中だ。通りを行き来する人々の足元が見える半地下住宅に暮らす失業中の一家が、長男が裕福な一家の家庭教師になったことから、家族ぐるみで寄生を企む物語だ。意表を突く展開と風刺の効いた語り口は欧米でも熱狂的に受け入れられ、ゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞、監督賞、脚本賞、映画俳優組合(SAG)賞で最高賞のキャスト賞にノミネートされ、アカデミー賞の国際映画賞(外国語映画賞が今年から名称変更)と主題歌賞のショートリスト入りを果たし、13日発表のノミネーションで何部門候補に入るかが注目されている。
・格差社会を痛烈に皮肉り米・仏でも大ヒット/『パラサイト〜』ポン・ジュノ監督インタビュー
同じく10日公開の『フォードvsフェラーリ』は、1966年のル・マン24時間耐久レースをめぐる実話の映画化。カーレースで圧倒的な強さを誇るフェラーリを負かす新車開発をフォード社から請け負ったエンジニアのキャロル・シェルビーとドライバーを務める型破りなイギリス人レーサー、ケン・マイルズの奮闘を描く。マイルズを演じたクリスチャン・ベイルがゴールデン・グローブ賞、SAG賞などで主演男優賞候補になっている。
17日公開の『ジョジョ・ラビット』は第二次世界大戦下のドイツを舞台に、アドルフ・ヒトラーを空想上の友だちとして過ごす10歳の少年ジョジョの物語。監督であるタイカ・ワイティティがヒトラーを演じている。ゴールデン・グローブ賞ではミュージカル・コメディ部門の作品賞、12歳のローマン・グリフィン・デイヴィスが主演男優賞候補になり、SAG賞ではキャスト賞、スカーレット・ヨハンソンが助演女優賞にノミネートされている。
31日公開の『ナイブス・アウト/名探偵と刃の館の秘密』は『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督が『007』シリーズのダニエル・クレイグを主演に迎えた殺人ミステリー。高齢の著名ミステリー作家の突然の死をめぐる謎に迫る。ゴールデン・グローブ賞ではミュージカル・コメディ部門で作品賞、主人公の探偵を演じたクレイグが主演男優賞、作家の看護師を演じたアナ・デ・アルマスが主演女優賞にノミネートされている。
2月14日公開の『1917 命をかけた伝令』はゴールデン・グローブ賞ドラマ部門作品賞、監督賞、作曲賞で候補になっている。第一次世界大戦で重要なミッションを与えられ、伝令として激戦の地を駆け抜けていく若きイギリス兵2人の1日を描く。『007 スペクター』のサム・メンデス監督が撮影監督の名匠ロジャー・ディーキンスと組み、110分間全編がワンカットに見える映像を実現。その技術もさることながら、任務を果たそうとする若者2人(ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン)のひたむきな演技、脇を固めるベネディクト・カンバーバッチやコリン・ファースの手堅い存在感も見どころだ。
21日公開の『スキャンダル』は、2016年の米大統領戦の最中にケーブルニュース局「FOXニュース」の元女性キャスターが社長のセクハラを告発した実話の映画化。シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーという豪華な顔合わせで、男尊女卑と戦う才色兼備のキャスターたちを描く。『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でオスカー受賞した辻一弘のメイクで実物そっくりの顔立ちになったシャーリーズ・セロンはゴールデン・グローブ賞主演女優賞、新進キャスター役のマーゴット・ロビーは助演女優賞候補にノミネート、SAG賞ではキャスト賞、主演女優賞(セロン)、助演女優賞にロビーとニコール・キッドマンがノミネートされている。
3月6日公開の『ジュディ 虹の彼方へ』は、『オズの魔法使』『スタア誕生』で知られる女優・歌手のジュディ・ガーランドをレニー・ゼルウィガーが熱演、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞主演女優賞を受賞し、ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門主演女優賞、SAG賞で主演女優賞にノミネートされている。
3月20日には『スーサイド・スクワッド』でマーゴット・ロビーが演じた人気キャラを主役にしたスピンオフ『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』、ロバート・ダウニー・Jr.が動物と話せる名医を演じ、エマ・トンプソン、ラミ・マレック、トム・ホランドらが声の出演をする『ドクター・ドリトル』が公開になり、『レディ・バード』の監督・主演コンビ、グレタ・ガーウィグとシアーシャ・ローナンが再タッグを組み、ティモシー・シャラメやエマ・ワトソン、フローレンス・ピューと共演する『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』も3月公開だ。
4月10日には『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が公開。ダニエル・クレイグが演じるのはこれが最後。悪役は『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックが務め、日系アメリカ人のキャリー・ジョージ・フクナガが監督、共同脚本にはドラマ「Fleabag」で注目のフィービー・ウォーラー=ブリッジが参加しているのも注目ポイントだ。
5月1日にはマーヴェル・シネマティック・ユニバース(MCU)のフェーズ4の第1弾となる『ブラック・ウィドウ』が日米同時公開になる。スカーレット・ヨハンソンが引き続き、元ロシアのスパイである主人公を演じ、フローレンス・ピュー、レイチェル・ワイズが出演する。
女性が主役のヒーロー映画では、『ワンダーウーマン』の続編『ワンダーウーマン 1984』も6月に公開予定。トム・クルーズ主演の『トップガン マーヴェリック』が、第1作から34年ぶりの続編として日本で公開されるのは7月。現役を引退し、次世代を育てる教官となったマーヴェリックと息子世代の新進パイロットたちを描く。
9月には、先ごろ予告編が公開されたばかりクリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』が公開。時間が逆転する世界で、あるミッションに挑む男の物語で、『ブラック・クランズマン』のジョン・デヴィッド・ワシントンが主演。ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキほか、マイケル・ケインやケネス・ブラナーも出演する。秋には豊川悦司、國村隼、浅野忠信ら、日本からも多くの俳優が出演する『ミッドウェー』が公開。太平洋戦争中の1942年に北太平洋のハワイ諸島付近で起きたミッドウェー海戦の映画化で、ローランド・エメリッヒが監督を務める。
日本がオリンピック・イヤーで盛り上がる2020年だが、映画も例年以上に多彩な作品が揃って公開待機中だ。
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