【落語家・瀧川鯉八の映画でもみるか。/第9回】
「こんなときは映画でもみるか」と自宅でDVDやらネット配信やらで楽しんでいる人がたくさんいることでしょう。
逆に映画館はいま大変。
世の中も大変。
いつかまた映画館に気楽に遊びに行ける日が戻ってきたら、ぜひとも気持ちが晴れるような映画を見たい。
大きなスクリーンで『お熱いのがお好き』とか『タンポポ』とか見たいなあ。
・【鯉八の映画でもみるか。8】魅惑の中野ワンダーランド、怪しい地下での楽しみとは…
いちばん見たいのは1996年公開の『Shall we ダンス?』
もうそんな昔の作品なんだとびっくり。
この20年はあっという間に過ぎたような気がする。
本当に20年あったのかなという感覚。
誰かが嘘ついてズルして、実際は4年くらいしか経ってないんじゃないかと思うくらい。
だって、見ても古くない。
いい映画っていうのは古くならないんですね、質が高くて。
こんないい映画って世界にもそんなにない気がする。
台詞も洒落てるし、リズムよく、ユーモアたっぷりで、話もシンプル。
創作ってシンプルなものが美しいし、美しいものを作るのはとっても難しい。
役者さんみんな脂のってるんだよなあ。
役所広司さんなんて序盤まったく冴えないんだけど、最後かっこいいもの。
役者さんみんないいけど、やっぱり周防映画の竹中直人さんは圧倒的。
このころは大河ドラマで『秀吉』もやってる頃だから、なんかもうすごいの。
別格のオーラある。
映画館で見たら、みんな一斉に笑うだろうな。
頭のでかさと手足の短さのバランスでコミカルに踊るんだもの、コメディアン竹中直人の才能爆発。
でも哀しいの。
気持ち悪いし。
ほんと気持ち悪い。
でもいい。
それがいい。
若い女性ダンサーにホテル街でフラれるとこなんて哀愁だだ漏れで。
その後ろに電車が通る。
あのときの顔こわいもの。
コミカルな竹中さんよりも魅力的かもしれない。
結局は振り幅なんだろうな。
映画ってこういうときのためにあるのかもしれない。
見た人を消極的にそっと愉快にさせてくれる、そんなのがいい。
「こんなときは素敵な映画でもみるか」と思ったらぜひ『Shall we ダンス?』を。
ただこの濃厚接触禁止のご時世に社交ダンスはいかがなものかとも思うけど、まあそれもよし。
※【鯉八の映画でもみるか。】は毎月15日に連載中(朝7時更新)。
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