筋萎縮性側索硬化症(ALS)を描いた3本、難病の絶望から光を見出すことはできるのか
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三浦春馬が自ら提案、ALSテーマの『僕のいた時間』
昨年11月に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者に対する嘱託殺人を請け負った容疑で、7月23日に2人の医師が逮捕されるというショッキングな事件が起こった。主治医でない人物が、金銭を受け取った上で安楽死を請け負うなどということは、あってはならないことであるが、一方で、女性患者本人が長い闘病生活の中で安楽死を望んだとも言われており、複雑な思いにかられてしまう。
・2014年ハリウッド10大ニュース(前編)/「アイス・バケツ・チャレンジ」などもありました
ALSとは、全身の運動神経が障害されて筋肉が萎縮していく進行性の神経難病であるが、何よりもわれわれに求められることは、この病気について理解するということだ。2014年ごろ、バケツに入った氷水を頭からかぶる動画をネットに投稿する「アイス・バケツ・チャレンジ」が世界的に話題を集めたことがあった。このムーブメントがきっかけでALSへの理解が広まり、多額の寄付金が各国のALS協会に寄せられた。そしてその寄付金をもとに、ALSの研究が進められるなど、一定の成果があったことが報告されている。
ALSを宣告された元アメリカン・フットボールのスター選手スティーブン・グリーソンの姿を描き出したドキュメンタリー映画に『ギフト 僕がきみに残せるもの』という作品があった。NFLのスター選手だったグリーソンは、選手引退後にALSを宣告される。そしてちょうど同じころ、妻のミッシェルの妊娠が分かる。だが自分は、生きている間に、わが子に会うことができるのだろうか。生まれ来る子のために、自分は何が残せるのだろうか。そう考えたグリーソンは子どもに贈るために、毎日、自分の姿をビデオダイアリーとして撮り続けた。彼が経験する旅、イベントから、火をおこす方法、デートの仕方、残せるものはすべて撮影した。子どもに対する父親の愛情の深さに涙する人も多かったドキュメンタリーだ。
エディ・レッドメインが宇宙物理学者スティーヴン・ホーキング博士を演じた『博士と彼女のセオリー』という映画もあった。難病に指定されるALSを発症しながらも、奇跡的に命を永らえ、世界最高の頭脳とうたわれたホーキング博士。彼が、最初の妻ジェーンの献身的な支えを得て、偉業を成し遂げるさまを描き出した同作。徐々に身体の筋肉が衰えていくホーキング博士を熱演したエディ・レッドメインは、この作品でアカデミー賞主演男優賞を獲得した。
そして最後はテレビドラマとなるが、7月に急逝した三浦春馬さんの2014年の主演作『僕のいた時間』も忘れがたい1本だ。少しずつ身体の自由が利かなくなる恐怖の中で、家族や友人、恋人などにどう向き合うのかを模索していくヒューマンドラマ。難病に対峙(たいじ)する人間ドラマとしての側面はもちろんのこと、自分は誰にも必要とされていないのではないかと思っていた青年が、そこからいかにして光を見いだしていくのかを模索していく成長ドラマとしても見応えがあった。本ドラマは、あるとき、ALSのドキュメンタリーを見たという彼が、こういう企画ができないかとプロデューサーたちに提案したことから企画が始動したという。彼の思いが込められた繊細な演技は、今だからこそ胸に迫るものがある。(文:壬生智裕/映画ライター)
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