人間の飽くなき欲望を描いた『ウォール街』(87年)から23年の時を経て作られた続編『ウォール・ストリート』。生き馬の目を抜くニューヨークのウォール街で繰り広げられる激烈なドラマに再び取り組んだオリバー・ストーン監督が来日、11月29日にザ・ペニンシュラ東京で記者会見が行われた。
『ウォール・ストリート』作品紹介
[動画]『ウォール・ストリート』予告編
「アメリカでは日本の経済の厳しさが報じられていますが、そんな風には見えず、非常に豊かな感じに見えます。少なくとも銀行などは持ちこたえているように思えます」と、アメリカ人の目から見た日本の印象について語ったストーン監督。前作から23年経って、続編を作ろうと思った理由を聞かれると、1980年代のレーガン時代に金融市場の自由化が始まり08年のリーマンショックで終わったことに触れ、金融緩和の始めと終わりを『ウォール街』(80年代)と『ウォール・ストリート』(リーマンショック後)で描けるのではないかと思ったからだと語った。
前作から時が経って様変わりしたウォール街の様子が描かれた本作。その違いについてストーン監督は「前作では(マイケル・ダグラス扮する)ゲッコーが個人の責任で投機をしていたが、その後、それを中央銀行が始めたことが問題。巨大な資本を持っているので、ダメージも大きくなる」と、モラルが崩れた金融業界についてコメント。そして「もっと悪いことに、(現代のウォール街は)儲けた金を社会に還元しなかった。銀行が罪悪感をもっていないことも非常な驚きでした」と苦言を呈してから、「(入念なリサーチで知ることができた)それらの新しい発見を、必ず本作に盛り込みたいと思った」と明かした。
前作では若い世代を代表する人物としてチャーリー・シーン扮するバドが登場したが、本作ではシャイア・ラブーフとキャリー・マリガンが若手世代のキャラクターを演じている。2人の若手俳優と仕事した感想を聞かれると「とてもエネルギーに溢れていて、彼らと仕事をするのは楽しかった」とストーン監督。そして、「私はこの映画を、3世代の物語として描きたかった」と語った。
「ゲッコー(マイケル・ダグラス)などの旧世代。次にジョシュ・ブローリン扮する金融業界の黒幕。そして(ラブーフが演じる)ジェイコブと(マリガンが演じる)ウィニーら若手たちの3世代の物語を描いた。ただ、ジェイコブたちが(前作の)バドと違うのは、彼らが非常に理想主義的だということ。今回、ウォール街でたくさんの20代の人々に会いましたが、彼らはお金を儲けたいと一生懸命な一方、どこかで理想を抱いていたからです」
また、イギリス人女優のマリガンがアメリカ人の役を演じたことについて触れ、「彼女は(アメリカ英語の)発音がうまくできるか気にしていましたが、とても良かったですよ。父親に捨てられ普通のアメリカ人として育ったわけではないウィニーの内面は、イギリス人でありアメリカ人ではない彼女だからうまく演じられたのだと思います」と話していた。
映画については「(前作で描いた80年代は)人を傷つけても成功することが一番大事だった時代。そして2009年になって拝金主義が加速。そんななかで(インサイダー取引で収監されていて)刑務所から出てきたゲッコーが反省したのかどうか……。それはみなさんが映画を見て考えていただければ」と語った。
『ウォール・ストリート』は2011年2月4日よりTOHOシネマズ 日劇ほかにて全国公開される。
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