【映画を聴く】『Smoke デジタルリマスター版』前編
トム・ウェイツの歌声が忘れられない名作『スモーク』が
21年ぶりに再上映!
映画『スモーク』が公開されたのは、今から21年前の1995年10月。恵比寿ガーデンシネマで25週にわたるロングラン上映を果たし、のべ9万人を動員した、ミニシアター系としては異例の大ヒット作品だ。今も多くの人に愛されるこの不朽の名作が、デジタルリマスター版として復刻、このクリスマスシーズンを皮切りに全国で順次再上映される。事前に内覧用のDVD-Rを見せてもらったのだが、画質の向上ぶりは小さな液晶テレビで見ても明らかで、すでにこの映画のファンだという人も新鮮な気持ちで見ることができるはずだ。
『スモーク』は、ポール・オースターが1990年のニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」という短編小説をもとにしている。妻を亡くして以来スランプに陥っている小説家のポール(ウィリアム・ハート)と、彼の通うブルックリンの葉巻店の店主のオーギー(ハーヴェイ・カイテル)を中心とした群像劇だ。ビートたけしと西島秀俊のコンビによる『女が眠る時』も記憶に新しいウェイン・ワン監督の名を一躍有名にした作品であり、オースター本人が脚本を担当したことも当時大きな話題となった。
今回の再上映にあたり、製作総指揮として企画から完成までのすべての工程に関わった井関惺さんのインタビューが公開されたが、そこで明かされたところによると、トム・ウェイツが本作に楽曲を提供しているのは雲隠れしたことの“お詫びのしるし”なのだという。
今となってはウィリアム・ハートとハーヴェイ・カイテル以外の役者が演じるポールとオーギーや、トム・ウェイツの「Innocent When You Dream(夢見る頃はいつも)」が流れないラストシーンなど想像がつかないが、もし何の問題もなくキャスティングが進んでいたとしたら、本作が全然違う印象の作品に仕上がっていたことは間違いない(後編へ続く…)。
・後編「信じる者が1人でもいれば、その物語は真実に違いない」
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