【映画を聴く】『エリック・クラプトン〜12小節の人生〜』前編
まさかこれほどとは…衝撃的な人生を紐解く
サブタイトルにある“12小節”とは、ブルースの基本になる尺のこと。その12小節でひと回りするコード進行をくり返し演奏しながら、シンガーは自身の孤独や悲哀、苦悩について歌う。
エリック・クラプトンの音楽的ルーツにブルースがあることは承知しているし、その半生が波乱万丈だったことも何となく聞いてはいたけれど、まさかこれほどとは……。『エリック・クラプトン〜12小節の人生〜』は、たとえば1992年の大ヒットアルバム『アンプラグド』やベイビーフェイスと組んだシングル「チェンジ・ザ・ワールド」以降の“再生”した彼の姿しか知らないファンなら、そう驚かずにはいられないエピソードばかりの衝撃的なドキュメンタリーだ。
ゆきずりの恋で生まれた自分を息子と認めず、祖父母に育児を丸投げして出て行った母と、その“代わり”になってくれる人を探し続ける、出口の見えない女性遍歴。こういったエピソードは2008年に日本語訳も刊行された『エリック・クラプトン自伝』ですでに本人が率直に書き綴っているが、クラプトンと25年来の親交を持つリリ・フィニー・ザナック監督は彼の人生そのものを一曲の“ブルース”として捉え、それらを歌の断片のようにスクリーンに散りばめていく。いっぽうでクラプトンの音楽的な功績もクロノロジカルに手際よくまとめられており、ヤードバーズ、ジョン・メイオール&ブルースブレーカーズ、クリーム、デレク&ザ・ドミノス、ブラインド・フェイス、ソロと続く彼の音楽探求の過程を、新しいファンにもわかりやすく提示する仕上がりになっている(後編へ続く…)。
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