【あの人は今】40歳を超えても、とことん自由でロックなジュリエット・ルイス

先日、偶然テレビを点けたら彼女の姿が映った。マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の『ケープ・フィアー』(91年)の1シーン。弁護士の父を持つ問題児の16歳の少女が、父へのお礼参りにやって来た元凶悪犯と対面する場面。デ・ニーロ扮する男の素性を知りながら、危険な魅力に惹かれていく少女の無意識の媚態は強烈で、見てはいけないと思いながらも目を離せなくさせる、凄まじい磁力を発していた。演じた当時、ジュリエット・ルイスはまだ17歳。アカデミー賞助演女優賞にもノミネートされ、一躍、注目の的となった。

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いわゆる美女ではないし、スレンダーでボーイッシュな容姿。常にクネクネと不思議な動きをして、プレミアなど晴れの場には奇抜なスタイルで現れる。インタビューではぶっ飛んだ発言を連発し、恋人は10歳年上のブラッド・ピット。90年代初めのジュリエット・ルイスは、今のクリステン・スチュワートのような立ち位置だった。

6月に40歳の誕生日を迎えた彼女は、現在では女優業も続けつつ、ロック・シンガーとして音楽活動に力を入れている。PVを見ると、キャッチーなサウンドも耳の残るが、何と言っても彼女の存在そのものが圧倒的だ。贅肉の一切ない体を誇示するカラフルなレオタード姿、猫のようにしなやかなダンス、パンチの効いた歌声。とことん自由でロックな女。フジロック・フェスティバルやツアーなどで何度か来日も果たし、今年は新しいアルバムも発表予定だ。

『カリフォルニア』(93年)でカップル共演が話題となった直後にブラピと別れたのがちょうど20年前。無名の役者同士として出会い、ほぼ同時期に揃って有名になったことで終わった恋について、「2人にとって、とても特別な時期だった。今はいい思い出よ」と語る。だが、破局後に『ギルバート・グレイプ』、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』など話題作への出演が続くなか、ドラッグ依存にはまっていき、22歳でリハビリ施設入りした。ちなみにこの施設はサイエントロジーの系列で、彼女は父親で俳優のジェフリー・ルイス(クリント・イーストウッド出演作の常連)と共に信者であることを公言している。かつては父との確執も伝えられたが、今年の父の日には、インスタグラムに幼い頃の父とのツーショット写真を貼って「世界で一番クールな男。Happy Father’s day」とポスト。年月を重ね、恩讐を越えて達観していくのだなぁと思う。

女優としては、近年は作品のスパイス的な脇役を演じることが多い。ドリュー・バリモア監督の『ローラーガールズ・ダイアリー』(09年)で演じた、女子高生ルックで相手をぶちのめすローラーゲームのスター選手役は印象深い。「スケートを始めたのは31歳の時。自分が得意なものを見つけるのに、それだけ時間がかかった」とドスの利いた低い声で語る台詞が、彼女自身とロックの関係にも重なって沁み入る。

そして、今も本当にいい役者なのだとしみじみ思わされるのは、使命感あふれる弁護士をストレートに演じる『9.11 自由への扉』のような作品に出演するときだ。エキセントリックさを封印しても、観客を物語へ引き込む力は得難い才能だ。年末にはメリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツと共演する『August: Osage Country(原題)』が全米公開を控えている。ユアン・マクレガーやベネディクト・カンバーバッチらも出演する家族の物語で、実力派の技を見せてくれるに違いない。(文:冨永由紀/映画ライター)

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