【2013年ニュース総まとめ6】映画興収/『風立ちぬ』が3年ぶり100億超え。邦画は不振
2013年の年間興行成績をまとめたところ、興行ランキング1位は『風立ちぬ』で、11、12年と出なかった興収100億円超えとなった。映画関係者の間では「これまでの宮崎アニメと違ってファンタジーではないため、客層が限定されて大ヒットは難しいのではないか」との声が多かったが、ふたを開けてみれば年配層から若い観客まで幅広く動員した。
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2位は『モンスターズ・ユニバーシティ』。02年公開で興収93.7億円を記録した『モンスターズ・インク』の前日譚を描くピクサーの新作で、モンスターのサリーとマイクは『トイ・ストーリー』並みの人気キャラだ。映画関係者の間では「『〜インク』は、モンスター2人と迷い込んだ女の子の泣ける友情物語が口コミで広がり大ヒットした。今回、女の子は登場しないので前作ほどの興収にはならないだろう」との声が多かったので、前作並みの興収は大健闘といえる。
3位は『ONE PIECE FILM Z』。前作『ストロングワールド』の興収48億円の約1.5倍の成績をあげた。劇場来場者に原作マンガ第千巻などが入った「海賊の宝袋」がプレゼントされることや、3年ぶりに原作者の尾田栄一郎が総合プロデューサーを務めたことがファンを強く引き付けた。
トップ3はアニメだが、映画興行全体もアニメが支えている。トップ20の中で、邦画アニメが6本、洋画アニメが3本、計9本が入っている。12年11月に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』が大ヒットして以降、アニメ映画の活況ぶりが目立っており、13年もこの流れが続いた。
実写映画で最大のヒットが、泣けるミュージカル映画『レ・ミゼラブル』。『オペラ座の怪人』を抜いて、日本で公開されたミュージカル映画としては歴代1位になった。米国では日本ほどヒットしておらず、日本では『ROOKIES』『おくりびと』に代表されるように「泣ける」作品がロングランヒットしやすい。
日本映画界を驚かせた最大のニュースが『テッド』の大ヒットだ。日本では当たりづらいといわれるコメディ映画ながら、興収42億円を記録した。客層は10代、20代の女性が中心で、交流サイトを活用してクマのテッドを前面に出す宣伝が効いた。
映画の宣伝では、フェイスブックで「いいね!」と登録する数が1万、ツイッターのフォロワー数が5000を超えることが、映画をヒットさせるための目安と考えられているが、『テッド』はフェイスブックで「いいね!」と押した人が18万、ツイッターのフォロワー数は3万と破格の数字だった。宣伝担当者によると、フェイスブックでは、テッドがらみで一目見て笑えたりかわいいと思ってもらえる写真を発信し続けたことで人気が広がったという。
近年の映画界を支えてきた邦画の実写が不振で、最高は『真夏の方程式』『映画 謎解きはディナーのあとで』の33億円だった。12年は年間興収トップ3を邦画の実写が占めたのとは様変わりとなった。
不振な邦画実写にあって、福山雅治の主演作『真夏の方程式』『そして父になる』がどちらも興収30億円以上。13年は「福山イヤー」ともいえそう。特に『そして父になる』は是枝裕和監督のオリジナル作品だからサプライズヒット。テレビドラマの映画化やベストセラー小説・マンガの映画化ではない点が光る。福山のスター性に加え、カンヌ映画祭で審査員賞を受賞したことが「内容のお墨付き」となり、幅広い層を集客した。
スターといえば、『映画 謎解きはディナーのあとで』の櫻井翔、『プラチナデータ』の二宮和也と嵐人気は映画にも表れた。ランキング外だが松本潤の『陽だまりの彼女』も興収20億円に迫る大ヒットを記録している。嵐だけではなく、他のジャニーズ俳優もヒットを飛ばしている。岡田准一の『図書館戦争』と中居正広の『劇場版 ATARU−THE FIRST LOVE & THE LAST KILL−』は20億円に迫る成績で、生田斗真の『脳男』はダークな作風ながら13億円と健闘を見せた。実写映画が当たりづらくなりつつあることを踏まえると、「確実に当てられる」ジャニーズ俳優の起用が今後も増えそうだ。
実写の邦画ではフジテレビ関連が目立ち、『真夏』『謎解き』『父になる』『清須会議』『ストロベリーナイト』と5本が入っている。あとはTBSの『SPEC』と日本テレビの『謝罪の王様』、東宝製作の『プラチナデータ』。テレビ局映画と東宝製作の不振が邦画不振の一因といえそうだ。
ちなみに、年間興行収入は昨年の1952億円と昨年と同程度に止まりそうだ。(文:相良智弘/フリーライター)
[興行ランキング TOP20(日本)]
1位 『風立ちぬ』120億円
2位 『モンスターズ・ユニバーシティ』90億円
3位 『ONE PIECE FILM Z』69億円
4位 『レ・ミゼラブル』59億円
5位 『テッド』42億円
6位 『映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』40億円
7位 『名探偵コナン 絶海の探偵』36億円
8位 『真夏の方程式』33億円
8位 『映画 謎解きはディナーのあとで』33億円
10位 『そして父になる』32億円
10位 『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ「神速のゲノセクト ミュウツー覚醒」』32億円
12位 『ドラゴンボールZ 神と神』30億円
12位 『シュガー・ラッシュ』30億円
12位 『清須会議』30億円
15位 『007/スカイフォール』28億円
16位 『劇場版SPEC〜結〜漸ノ篇』27億円
17位 『アイアンマン3』26億円
17位 『プラチナデータ』26億円
19位 『怪盗グルーのミニオン危機一発』25億円
20位 『謝罪の王様』22億円
20位 『ストロベリーナイト』22億円
(12年12月〜13年11月9日までに公開された作品が対象。ムビコレ調べで、公開中の作品は最終興収見込み)
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