【元ネタ比較!】深夜バラエティが“まさか”の映画化、成功か? 失敗か !?

『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』
(C) 2013「キス我慢選手権 THE MOVIE」製作委員会
『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』
(C) 2013「キス我慢選手権 THE MOVIE」製作委員会
『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』
(C) 2013「キス我慢選手権 THE MOVIE」製作委員会
『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』
(C) 2013「キス我慢選手権 THE MOVIE」製作委員会
『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』
(C) 2013「キス我慢選手権 THE MOVIE」製作委員会

『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』

非吉本系芸人がメインで活躍する、テレビ東京の深夜バラエティの名物企画がまさかの映画化となった『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』。と言われても “まさかの映画化”ってよくあるフレーズだし、バラエティがモトネタの映画なんて、とバカにして見ないならもったいない! そこらのアクションコメディ作品より、なんぼほどオモシロいか。しかも、実験映画とも言える興味深い演出なのだ。

[動画]『ゴッドタン キス我慢選手権 〜』公開前夜祭/劇団ひとり、おぎやはぎ、バナナマン、葵つかさ、紗倉まな、京本政樹

もともと、番組企画の“キス我慢選手権”は何も知らない芸人がいきなり設定のなかに放り込まれ、美女の誘惑に負けずにキスを我慢できるか?というもの。それが劇団ひとりにおいては、持ち前の芝居好きと役柄没頭能力で、キスの攻防だけでなく、アドリブでの演技と物語展開も見ものに発展。そして今回、その劇団ひとり主演で映画化となったわけだ。劇団ひとりはキスを我慢しつつ、テレビの流れを受け継いだ“記憶を失った元暗殺者”を熱演。むちゃぶりが面白いわけだから、設定も物語も突飛なのだ。

主人公役だけが展開を知らず、共演者は何も知らない彼に合わせながら本来の筋に導いていかなくてはならない。そのために起こるフィクションと現実を行き来しながらのやりとりは緊張感があって絶妙。そして、やはりスゴいのが劇団ひとりのアドリブだ。もちろんマイク・リー監督作や是枝裕和監督作のようなリアリティあるものじゃなく、その逆。このうえなく芝居がかった演技で、セリフにしてもクサくて出来過ぎなわけだが、それが瞬時にポンポンと、しかも状況や相手のセリフをなぞらえたものだったりするから、笑いと感動が同時に巻き起こる。

さらに、アドリブ力は演者ばかりでなくスタッフも相当なもの。カメラ20台を導入し、やらせかと思うほどバッチリとハマった画づくりを見せる。あまりの完璧さに笑ってしまうが、テレビと同じく神様に扮したバナナマンとおぎやはぎが現れてモニタールームで傍観し、オーディエンスの気持ちを代弁してくれるのがまた痛快。映画ならではの必要以上のスケールのデカさにも驚きと笑いが起こる。

また、映画だからこその豪華なゲストにも驚き笑いが! 大晦日恒例となった日本テレビのバラエティ『笑ってはいけないシリーズ』のように大物の出落ち的な出演もあるから、なるだけ知らずに見たほうが楽しめる。反対に映画化だからといって、女優陣も知名度アップして生ぬるいほうのグラビア系に変わるんじゃないかと心配したが、引退・現役含めたAV経験者の美女たちがテレビシリーズから続投しているのは嬉しい。考えてみたらあの業界こそアドリブ力が問われる世界、そこで培った力と度胸で彼女たちがキスとアドリブ演技の攻防を劇団ひとりと繰り広げる。その誘惑も、テレビでは不可能なほど過激にエスカレートしているのがまた一興だ。ありがちなことに、徐々にシリアス度が増し、キス我慢シーンが減っていくが、これだけ本格的にアクションコメディ&実験映画として成立していれば文句なし。最後にはちょっとしたオチも用意され、中身のない作品のはずなのに爽快な達成感が訪れる。

この映画化、“まさかの映画化”のフレーズにもふさわしく、十分に成功してると言っていいだろう。(文:入江奈々/ライター)

『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』は6月28日より全国公開中。

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