【元ネタ比較!】三池監督、クドカンのベストマッチ! ぐんぐん引き込まれるお祭り映画
『土竜(モグラ)の唄 潜入捜査官 REIJI』
ビッグコミックスピリッツで連載中の高橋のぼる原作による人気マンガを、三池崇史監督、宮藤官九郎脚本で実写映画化した『土竜(モグラ)の唄 潜入捜査官 REIJI』。正義感は人一倍強い問題児の巡査・菊川玲二が突然、潜入捜査を命じられ、明日、いや一秒先の運命もわからない暴力団組織のなかに飛び込んでいく任侠アクションだ。
原作は泥臭くて垢抜けない、いかにもな青年向けコミック。デッサンはズレていても歯の1本1本まで細かく描き込むクドい画調で、ノリと勢いで突き進んでいく。描かれる闇社会もマンガ的でベタな世界、見た目にもイカレたキャラクターたちが目をひん剥いてしのぎを削っている。そして主人公・玲二には息つぐ暇なく次々とピンチが訪れ、ありえない展開と気合いで切り抜けていく。
この原作のテイストが、三池監督、クドカンとベストマッチ! あり得ない展開をケレン味たっぷりにおふざけで見せるのは言わずもがな、三池監督の十八番(おはこ)。クドカンは自ら作詞した「土竜の唄」を入れ込みつつ、出しゃばりすぎることもなく原作をギュッと濃縮させることに成功している。細かいことは気にせず勢いとノリで突き進め〜と揃った足並みに見てる方もどんどん引き込まれてしまう。バイオレンスシーンも過激だが、クドクドしい画調の原作よりむしろサラッと見られるだろう。
そして、もちろん脚本と監督だけで実写化が成り立つわけではない。彼らの挑発的な要求に見事に応えた役者陣があっぱれだ。玲二役をつとめる主演・生田斗真のまさしく体当たり熱演には拍手! インパクト強い予告編でも目にする、素っ裸でボンネットにくくりつけられるシーンをはじめとして、その直後には洗車場で車と共に洗われてしまい、色気の欠片もないおバカなベットシーンも披露する。柄on柄のど派手スーツも、彼だとカッコよく見えてしまうのが玉にキズだが、ダサいオーバーアクションで突き抜けてみせ、一皮むけた役者になったと思わせる。原作者・高橋のぼる作詞による「土竜音頭」で珍しく歌声を聴かせるファンサービスも。
また、「月刊!スピリッツ」でスピンオフコミック『土竜の唄 外伝 狂蝶の舞(パピヨンダンス)』が連載されるほど、主人公の次に、いや主人公よりもキャラの立っている組織の若頭・日浦匡也に扮するのは堤真一。日浦は残忍な行為を嬉々として行い“クレイジーパピヨン”の異名を取るが、昔気質で人情に厚く、玲二も男ぼれする男だ。不気味ながらも筋の通った役どころを堤が巧演し、クライマックスでは三池映画らしい見せ場も颯爽とこなしている。
他にも、今や個性派俳優として邦画界になくてはならない存在となった山田孝之ら実力派たちがズラリ。なかでも注目したいのは、実力派たちに負けず劣らずのパワーを見せるナインティナインの岡村隆史と上地雄輔だ。岡村はダイヤモンドの差し歯をした関西の組員、上地は全身タトゥーのヒットマンと奇抜な容貌に救われている面もあるが、お寒い存在に終わることなく鬼気迫る演技で印象を残している。
マドンナであるナイスバディな婦警・純奈が『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』の仲里依紗で、ゼブラクイーンといい、どうも三池監督と筆者とでは仲里依紗に持つイメージが違うのかもしれないとは思うが、気になる点はそれくらいなほど文句なしキャスティングに満足。
最初から最後までコーフンの連続で、男気たっぷりな関ジャニ∞の歌で盛り上げるエンディングには、続編を期待させる仕掛けも。こんなお祭り映画には乗っかったモン勝ちだろう。バッチ来〜いっ!(文:入江奈々/ライター)
『土竜の唄 潜入捜査官 REIJI』は2月15日より全国公開される。
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