デイン・デハーン
寂しさと怒りをたたえた影のある眼差しが印象的。『アメイジング・スパイダーマン2』で、主人公のピーター・パーカーの幼なじみのハリー・オズボーンを演じているデイン・デハーンは今年27歳になるが、頭の鉢が開き気味の骨格に少年ぽい体つきで、未だに10代の役がはまる。ペールブルーの瞳が印象的な少年らしい美しさに、屈折した心がうかがえる佇まいから、第2のレオナルド・ディカプリオという呼び声も高い。
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大きな注目を集めたのは昨年日本公開された『クロニクル』。シアトルを舞台に、学校にも家庭にも居場所のない孤独な少年が、唯一気にかけてくれる従兄弟とその友人で学園の人気者と偶然手に入れた超能力を使い続け、万能感を味わう一方で空しさを募らせ暴走していく。それは、父が遺した巨大企業「オズコープ」の社長となった後、心身ともに苦しんでいくハリー・オズボーンとどこか似ている。
デハーンはアメリカのペンシルヴェニア州に生まれ、ノースカロライナ大学芸術学部で演劇を学んだ後、2008年に舞台「アメリカン・バッファロー」のブロードウェイ公演でハーレイ・ジョエル・オズメントの代役としてキャリアをスタートさせた。『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』や『トゥルーブラッド』などテレビシリーズ出演を経て、前述の『クロニクル』に主演。その後、ライアン・ゴズリングの息子役を演じた『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』、禁酒法時代に密造酒作りに勤しむ少年を演じた『欲望のバージニア』、ヘヴィメタル・バンド、メタリカのライブ映像にフィクションの物語を絡ませた3D作『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』など、興味深い出演作が続く。
ものすごく芝居が巧いし引き込まれるが、結局その役者が“熱演している姿”を見ているだけ、と感じる場合がある。何を演じても、その役以上にいわゆる“中の人”の個性が勝る。それが“スターの名演”を見ているときの感覚だとすると、デハーンの演技はその対極にある。
他者を拒絶するようでいて、本当は人恋しくて、とにかくかまってもらいたい。ひとりぼっちの、根は優しい青年が苦悩や怒りを抱え込み、それを原動力に暴発する。『クロニクル』から『アメイジング・スパイダーマン2』に至るまで、彼にふられる役どころはタイプキャストの最たるものだが、そこにいるのがデイン・デハーンではなく、毎回ちゃんと違うものを見せてくれるのだから大したもの。物語のなかでキャラクターとして存在している。
『アメイジング・スパイダーマン2』のほかに「PRADA」の2014年春夏メンズコレクションの広告に起用されるなど、さらに注目を浴びて売れっ子になるのは間違いない。だが、スターではなく、役者になっていく人だと思う。似たような役が続いても、飽きるどころか必ず新しい発見がある。そんな楽しみな存在だ。(文:冨永由紀/映画ライター)
『アメイジング・スパイダーマン2』は4月25日よりTOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開される。
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