第22回東京国際映画祭のクロージングセレモーニーが10月25日に六本木ヒルズで行われ、各映画賞受賞作が発表された。
コンペティション部門最高賞である東京サクラグランプリに輝いたのは、音信不通だった兄弟の再会を軸に、混乱と疎外感を描いたブルガリア映画『イースタン・プレイ』。同部門審査委員長のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥは、「『イースタン・プレイ』は、際立って審査員一同のハートをつかんだ作品。映画が見せるべき“真実”というものがうまく表現されていて、美しさが感じられた。近代の若者が直面している複雑な社会をうまく描きながら、人生の希望をしっかりと見せてくれた映画だと思う」と、その素晴らしさを讃えた。
この『イースタン・プレイ』の主演俳優フリスト・フリストフはクランクアップ直前に事故で死亡したが、今回、最優秀男優賞を受賞。またカメン・カレフ監督も最優秀監督賞を受賞し、3冠となった。カレフ監督は、「本当にありがとうございました。ブルガリアにとっても誇りです。たくさんの賞をいただいて、帰りの飛行機で、重量オーバーになってしまいそうです」と笑顔を浮かべた。困難な製作状況についても振り返り、「撮影が終了して、小さなノートパソコンで編集を始めましたが、途中で資金が尽きてしまった。その後スウェーデンで共同プロデューサーを見つけて映画は完成しましたが、その時が一番孤独でした」と苦労を語った。
また、審査員特別賞を受賞した『激情』のセバスチャン・コルデロ監督は、「実は映画製作中に恋をしていたので、別の心境だったら入らなかっただろうセリフやシーンがあったのかもしれません」と裏話を披露。
小説家・辻仁成が監督し、アントニオ猪木の主演で話題となっていた『ACACIA』は、受賞が叶わなかった。
審査にあたっては、「作品を観客の目で見ること」を審査員に求め、感情や五感に訴える作品を選ぶようにつとめたと語ったイニャリトゥ委員長。イベント後の受賞会見では映画製作の現状についても語り、「経済的な危機に加え、フランチャイズ化された超大作、いわゆるヒーロー映画やバイオレンス映画によって、モラルや芸術までが危機を迎えている。気の毒なのは、真に価値のある映画を見ることのできない観客。映画はテレビの延長ではなく、レーティングや興行収入を気にする作品が多すぎる。映画とはやはり、人間の感情を伝えるものであるべき」と熱く語り、「そんな腐敗した状況で、唯一のレジスタンスが映画祭であり、映画祭はこうした問題の解決方法を模索していく場でもある。東京国際映画祭にはそういう試みをリードする存在になっていってほしい」と締めくくった。
●第22回東京国際映画祭/各賞受賞作品●
[コンペティション部門]
・東京サクラグランプリ──『イースタン・プレイ』(監督:カメン・カレフ)
・審査員特別賞──『激情』(監督:セバステャン・コルデロ)
・最優秀監督賞──カメン・カレフ(『イースタン・プレイ』)
・最優秀女優賞──ジュリー・ガイエ(『エイト・タイムズ・アップ』
・最優秀男優賞──フリスト・フリストフ(『イースタン・プレイ』)
・観客賞──『少年トロツキー』(監督:ジェイコブ・ティアニー)
[TOYOTA Earth Grand Prix]
『WOLF 狼』(監督:ニコラ・ヴァニエ)
[アジアの風]
・最優秀アジア映画──『旅人』(監督:ウニー・ルコント)
・スペシャルメンション──『私は太陽を見た』(監督:マフスン・クルムズギュル)
・特別功労賞──ヤスミン・アフマド(マレーシアの映画監督/09年7月に死去)
[日本映画・ある視点]
『ライブテープ』(監督:松江哲明)
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