祝35周年! 主題歌で振り返る映画『ドラえもん』シリーズ/後編

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『映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記』
(C) 藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2015
『映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記』
(C) 藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2015

(…前編より続く)このうち、複数回の主題歌を手がけているアーティストは3組。もっとも多いのが武田鉄矢で、海援隊、武田鉄矢一座名義を含むと『のび太の宇宙小戦争』『のび太とアニマル惑星』『のび太の雲の王国』『のび太と夢幻三剣士』『のび太の創世日記』『のび太と銀河超特急』の6作になる。武田鉄矢に続くのが岩渕まことで、『のび太の宇宙開拓史』『のび太の大魔境』『のび太の海底鬼岩城』の3作の主題歌を連続で歌っている。岩渕まことは長くゴスペル分野で活動してきた人で、クリスチャンの同志でもある小坂忠とのデュオなどで耳の肥えたポップス・ファンにも知られる存在だ。そしてもうひとりは、“初代ドラえもん”こと大山のぶ代。『のび太の恐竜』と『のび太と竜の騎士』で、まんま“ドラえもん”として歌っている。

【映画を聴く】祝35周年! 主題歌で振り返る映画『ドラえもん』シリーズ/前編

武田鉄矢は、主題歌を歌った回数の多さだけでなく、『のび太の恐竜』から『のび太と銀河超特急』まで16作の主題歌の作詞を手がけたことでも知られている(ただし『のび太の魔界大冒険』の主題歌「風のマジカル」のみノータッチ)。これは交流のあった原作者の藤子・F・不二雄から直々の要請を受けたもので、彼の亡くなった1996年に公開された『のび太と銀河超特急』を最後に『ドラえもん』主題歌の作詞を“引退”している。

そう考えると、翌1997年の『のび太のねじ巻き都市冒険記』での矢沢永吉の起用は、スタッフにとっても大きな賭けだったことは間違いない。しかし、武田鉄矢というブレーンが作り上げたドラえもんの王道的な世界観を引き継ぎながら歌い手としての絶対的な存在感を見せつけることで、矢沢はその役目を見事に全うしている。本作で矢沢が歌った「Love is you」以降、『ドラえもん』の主題歌は優等生的なマナーにとらわれることなく、曲調・人選ともに幅を広げている。

特に、以前バラエティ番組で「ドラえもんのひみつ道具みたいな名前やな[(C)松本人志]」と言われるなど、何かと『ドラえもん』と縁の深い(?)スキマスイッチが起用された『のび太の恐竜2006』以降を見てみると、mihimaru GT、絢香、柴咲コウ、青山テルマ、BUMP OF CHICKEN、福山雅治、Perfume、Kis-My-Ft2と、同時代的なアーティストの起用が目立つ。どの曲もエンドロールにふさわしい清々しさを持つ点では共通しているが、これは何より『ドラえもん』の持つ包容力の大きさがあってのもの、という気もする。

個人的にはリアルタイムで映画『ドラえもん』を見たのは1989年の『のび太の日本誕生』以来(!)だったけれど、時代が変わっても何ひとつ変わらないそのエバーグリーンぶりに、改めて「ドラえもん、すごすぎ!」とリスペクトを深めてしまった。(文:伊藤隆剛/ライター)

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

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