実は教師の鑑!
殺せんせーの魅力が光る
中高生に絶大な人気を誇る「週刊少年ジャンプ」で連載中のSF学園アクション、「暗殺教室」が実写映画化された。ある日突然、1年後に地球を破壊するという、危険なタコ型生物が有名進学校・椚ケ丘中学の落ちこれクラスの3年E組に担任教師として現れる。3年E組の落ちこぼれ生徒たちは、プロの暗殺者や軍隊も殺せなかった危険生物の暗殺を、成功報酬100億円を提示されて国家から秘密裏に託される。
・(前編)無理ある実写化は引くが、意外とシリアスなテーマはきちんと踏襲し好感の映画『暗殺教室』
メインキャラの黄色で真ん丸顔のタコ型生物・殺せんせーをはじめ、ビジュアルとしての実写化に違和感があるために、なかなか内容が頭に入ってこない映画版ではあるが、原作にある「教育に対する姿勢」という、実はシリアスなテーマをきちんと踏襲している。
そもそも、舞台となる椚ケ丘中学の3年E組は落ちこぼれクラスだが、不良の巣窟などではない。椚ケ丘中学は進学校であり、クラスは習熟度編成、要するに成績順にA〜Eまで輪切りされ、Eは“END”のEと言われて、他の生徒からはもちろん教師からも蔑まれており、校舎でさえE組だけ山奥にあるボロボロの木造の旧校舎に隔離されるように通わされている。
おそらく全国平均的には偏差値が低くはないはずのE組の生徒は、椚ケ丘中学においては成績が悪いというために生きている資格がないかのように存在を否定され、自己肯定できずにいるが、殺せんせーは彼らと正面から向き合ってくれる。生徒たちは自分を殺しに来るのだから存在を否定している場合ではないと、理に適っている。
殺せんせーは存在感の薄い渚にも本質を見抜いたアドバイスをし、「人に胸を張れる暗殺をしましょう」と説き、暗殺能力だけでなく人間力を高めていく。文字通り自分を倒して成長していくように生徒を導いているのだ。巨乳に弱く、ギャグも多く、見た目は人間と遥か遠くかけ離れた存在だが、実は非常に人間的で教師の鑑である殺せんせー。そんな殺せんせーの魅力が伝わるエピソードを、映画版ではこぼすことなく拾って見せてくれる。
アクションやギャグ、そしてなんといっても突飛な設定とキャラクターに目を奪われてしまいがちだが、中だるみもせずに、根底にあるメッセージを感じ取ることができる。非現実的な設定の実写化は困難だっただろうが、テーマ性をないがしろにせず掬い取っているところに好感が持てた。(文:入江奈々/ライター)
『映画 暗殺教室』は3月21日より全国公開される。
【関連記事】
・【元ネタ比較】ももクロが本意気で勝負! 珍しいほどド直球な青春映画『幕が上がる』
・【元ネタ比較】原作の凄さはいずこへ? 上滑りして感情移入できない凡作『寄生獣』
・『妖怪ウォッチ』人気はいつまで続く?『ポケモン』との違いは?
・【週末シネマ】さだまさし×大沢たかお×三池崇史。まさかの組み合わせから誕生した力強い生命讃歌
・動員100万人突破の『ドラえもん』V3を制するのはどの作品か?
PICKUP
MOVIE
INTERVIEW
PRESENT
-
【舞台挨拶あり】齊藤工が企画・プロデュース『大きな家』公開直前舞台挨拶付試写会に15組30名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.22 -
『型破りな教室』一般試写会に10組20名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.29