2012年の初作から2年、いよいよ公開される『るろうに剣心 京都大火編』。製作費30億円、撮影期間6ヵ月、エキストラ延べ5000人、しかも『伝説の最期編』との2部作連続上映。そういう数字を並べるだけでも、このシリーズへの桁外れの期待値はうかがい知れる。そもそも原作でも一番人気である「京都編」の映画化ということもあって、キャストやスタッフのギラギラした熱がこちらにも伝わってくる。個人的にも、これだけ続きが気になるのは『24-TWENTY FOUR-』シーズン5のラスト以来か!? なんて思いながら(たとえが微妙に古くてごめんなさい)堪能してしまった。
・夢に溢れた音楽ドキュメンタリー『黄金のメロディ マッスル・ショールズ』
初作『るろうに剣心』 に引き続き、今回の『京都大火編』でもエンディングテーマを担当しているのはONE OK ROCK。疾走感溢れる新曲「Mighty Long Fall」を提供している。西海岸パンクやエモ、ラウドロックといった音楽性をベースとするこの4人組、今年の春には2013年の海外ツアーを追った中野裕之監督のドキュメンタリーフィルム『FOOL COOL ROCK!』も公開され、その人気を広げている。「森進一と森昌子の息子がヴォーカルをやってるバンド」とか「ジャニーズでお父さんの『襟裳岬』をレパートリーにしていたあの子のいるバンド」といった説明も今さら無粋な、若手バンドの最注目株と言っていいだろう。
ONE OK ROCKの音楽でとにかく話題になるのが、そのヴォーカル=takaの歌の上手さ、特に英語の発音の自然さだ。“日本語とロックの融合”というのは、はっぴいえんど(細野晴臣、大滝詠一、松本隆、鈴木茂により1969年に結成。1972年に解散)の時代から延々と日本のロックバンドが取り組んできたテーマだが、ワンオクの音楽は先達が繰り返してきたあらゆるトライアルをひょいと超えてしまうような軽やかさを持っている。それは日本語の文学性をそのままロックに持ち込もうとした、はっぴいえんどとは違うものだし、英語っぽい発音で新鮮に日本語を聴かせようとする佐野元春やサザンオールスターズ、岡村靖幸、Mr.Childrenといった人たちの作風とも異なる。サビでいきなり取って付けたような英語に転じる“バンドブーム期”によく聴かれた曲調とももちろん違う。英語と日本語が完全にシームレスにつながった、バイリンガル時代の日本のロックを強烈に意識させるものだ。と言っても、takaは特に帰国子女というわけでもないそうで、これは両親譲りの耳の良さの成せる技なのだろうか。街でかかっている曲を洋楽だと思って聴いていたらいつの間にか歌詞が日本語に変わっていて「あれ、日本の曲? しかもワンオク?」みたいな経験をした人が身の回りにけっこういたりするから面白い。
映画『るろうに剣心』シリーズ は、北野武監督『座頭市』以降見られるようになった“ヴィジュアル系時代劇”の流れを、さらにダイナミックに拡張した作品だ。リアリズムに収まらない殺陣は圧倒的にスピーディだし、史実とフィクションのブレンド具合も絶妙。そんな“何でもアリ”な作品なので、ONE OK ROCKの音楽とも相性はとてもいい。「Mighty Long Fall」は『京都大火編』の締め括りと言うよりも『伝説の最期編』への橋渡しとして、重要な役目を果たしている。(文:伊藤隆剛/ライター)
『るろうに剣心 京都大火編』は全国公開中。
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