(…前編より続く)中島ノブユキ、伊藤ゴローの2人は、共に坂本龍一主宰のレーベル=commmons(コモンズ)から作品をリリースするなど、坂本龍一と深い関わりを持つ音楽家ですが、そういう意味では近年、Yellow Magic Orchestra(YMO)のライヴでサポートを務めたりもしている弦楽器奏者、高田漣も映画ファンにおすすめしておきたい人物。フォークシンガーの高田渡を父に持ち、ペダルスティール・ギターをはじめとする各種弦楽器を自在に弾きこなすマルチプレーヤーで、これまでに「アンサンブル」など7枚ほどのソロ・アルバムで演奏家としての達者ぶりを披露しているほか、中島ノブユキとのデュオでハイレゾ音源なども配信しています。昨年WOWOWで放送されたテレビドラマ『グーグーだって猫である』や、2013年の『箱入り息子の恋』、『横道世之介』などで印象的なサウンドトラックを手がけているので、今後もその音楽的引出しの多さは映画界で重宝されるのは間違いないと思います。
・今年の活躍にも期待! 映画ファンにおすすめしたい日本人音楽家たち/前編
同じくYMOのサポート・メンバーとしてギターを弾いている小山田圭吾(コーネリアス)については、当コラムでも昨年『攻殻機動隊ARISE』シリーズを取り上げました。他にも昨年DVD化されたドキュメンタリー映画『100万回生きたねこ』の音楽などを担当しているし、映像作品と親和性の高い音楽家として、いまやよく知られた存在だと思います。ただコーネリアスの場合、映画音楽もさることながら、2006年以降途絶えているオリジナル・アルバムを今年こそは出してほしい! と思っている人が多いのではないかと。そのコーネリアスの「Toner」という楽曲のPVを制作した高木正勝は、映像作家であり音楽家でもある人で、細田守監督のアニメ作品『おおかみこどもの雨と雪』で音楽を担当していたりします。
日本に限らず、音楽家のピープル・トゥリーは其処彼処で意外なつながりを見せたりして面白いのですが、今回挙げた5人──中島ノブユキ、伊藤ゴロー、高田漣、小山田圭吾、高木正勝は、偶然にも坂本龍一という“幹”を持つことで共通しています。こういったつながりを意識しながら改めて映画を見てみると、これまでとは違った角度から見えてくるものがあるかもしれません。
それにしても坂本龍一。アーティストとして自身の名義で作品をリリースする日本の音楽家が映画音楽も手がける、という流れは、坂本龍一以降に広く根付いたものと言っていいと思います。本人は現在病気療養中ですが、今月17日には未発売音源集「year book 2005-2014」がリリースされるとのこと。また映画界で『戦メリ』や『ラストエンペラー』をも超えるような金字塔を打ち立ててほしいと思います。(文:伊藤隆剛/ライター)
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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