残念なキャスティング続々
リアルな実写化は引いてしまう
平面な“円”だから成立してるのに、立体的な“球”じゃ困るんだよ、殺せんせーの顔は。殺せんせーは「このマンガがすごい!」2014年オトコ編で第1位に輝き、中高生に絶大な人気を誇るコミック「暗殺教室」のキャラクターだ。
「暗殺教室」とはなんだか物騒なタイトルだが、“友情”“努力”“勝利”をスローガンにした「週刊少年ジャンプ」に相応しい、同誌で連載中の少年漫画だ。ある日突然、マッハ20で空を飛び、月の7割を破壊した危険なタコ型生物が有名進学校・椚ケ丘中学の落ちこぼれクラスの3年E組に担任教師として現れる。そして、1年後の3月には地球を破壊するという。かくて、3年E組の落ちこぼれ生徒たちは、プロの暗殺者や軍隊も殺せなかった危険生物の暗殺を、成功報酬100億円を提示されて国家から秘密裏に託される。生徒たちは危険生物に“殺せんせー”と名付けて日々暗殺にいそしむなか、意外にも殺せんせーは教師としての資質を発揮し、落ちこぼれだった生徒たちを再生させてゆく。
このいかにもなSF学園アクション漫画が実写化されたわけだが、案の定というか、違和感ありまくりなのだ。まず、原作者の松井優征が着想のきっかけになったという、原作でも映画版でも印象的なオープニング、教室で「起立、礼」の掛け声と共に生徒たちが殺せんせーに一斉にジャキッと銃を突きつけるシーン。シュールでインパクトがあって、漫画なら笑える。ただ、実写となると、殺せんせー用の特殊BB弾とはいえ、仮にも銃を制服姿の子どもたちが銃を構え、標的は3次元で立体的で球状の顔を持つ妙にリアルになった殺せんせーとなると、「いかん、いかん! 子どもたちにそんなことさせちゃダメだ!」とつい良心が痛んで引いてしまうじゃないか。
主人公の中学生・渚にしても、ショートのツインテールのような、アニメキャラによくある3次元ではどうなってるのかわかならい不思議な水色の髪で、男の子だけど女の子っぽくて中性的なキャラクターと、これまた実写化に不向き。映画版ではHey! Say! JUMPの山田涼介が扮し、顔はかわいいのだが、自身も男っぽいというようにガタイもしっかりしてて男臭く、中性的な役作りはオネェっぽく見えてしまう。
クラスメイトのカルマは菅田将暉が演じ、頭がキレるが食えないヤツという雰囲気はさすがに上手く出ているが、如何せん中学生には見えない。そんななかイトナ役は初代・こども店長こと加藤清史郎が扮し、年相応の中学生役である彼が浮いてしまう結果に。
ついでに言うとハニートラップを武器とする暗殺者のビッチ先生役は元KARAの知英が金髪で演じているが、逆にアジア感が強調されるわ、ビッチ感はゼロだわ、残念なキャスティング。救いがあるのは、人工知能ロボット・律は天使過ぎる橋本環奈が演じ、かわいければいい役なので及第点。それと、防衛省の烏間役を演じる椎名桔平は釣り目を誇張する目じりの線まで再現できており、合格といったところか。
やはり2次元の漫画だから成立する世界をまさかの実写化すると、無理があるってことだ。(文:入江奈々/ライター)
『映画 暗殺教室』は3月21日より全国公開される。
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