第68回カンヌ映画祭閉幕、予想を覆す受賞結果にブーイングも(後編)

審査委員の顔ぶれ/カンヌ国際映画祭公式サイトより
審査委員の顔ぶれ/カンヌ国際映画祭公式サイトより

(…前編より続く)コンペティション部門には常連の監督の新作が揃うことの多い映画祭だが、今年はエントリー作19本のうち、9本がコンペ初挑戦の監督の作品だった。監督の国籍は様々だが、主演にハリウッドで活躍するスター俳優を起用した英語作品が多く、『The Lobster』はコリン・ファレルとレイチェル・ワイズ、『Chronic』はティム・ロスが主演だ。これもある意味で映画界のグローバリゼーションの帰結と言えるのかもしれない。

第68回カンヌ映画祭閉幕、予想を覆す受賞結果にブーイングも(前編)

今年はイタリアのナンニ・モレッティの『Mia madre(原題)』やパオロ・ソレンティーノ監督がマイケル・ケイン主演で撮った『Youth(原題)』、アメリカのトッド・ヘインズ監督の『Carol』、中国のジャ・ジャンクー監督の『山河故人(原題)』などがパルム・ドールの有力候補と目されていたが、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟の審査員長以下、ギレルモ・デル・トロやグザヴィエ・ドラン、ジェイク・ギレンホール、ソフィー・マルソーらが名を連ねた審査員たちの選出は予想を覆す結果となり、授賞式ではブーイングも漏れ聞こえた

審査員長のコーエン兄弟の兄・ジョエルはクロージング・セレモニー後の記者会見で、「私たちは批評家による審査員ではない。作品を見る、芸術家による審査員たちなのだ」と、弟・イーサンは『Dheepan』について「審査員全員がとても美しい映画だと思った」と語った。

通常は授賞結果を淡々と発表するだけのクロージング・セレモニーだが、今年は日本のダンス・グループのパフォーマンスがあり、カメラ・ドールのプレゼンター、ジョン・C・ライリーがバンドを従えてステージに現れ「ジャスト・ア・ジゴロ」を歌って美声を披露するなど、ショーアップしたセレモニーになった。

名誉パルム・ドールを受賞したのは30日に87歳の誕生日を迎えるアニエス・ヴァルダ。デビュー作のフィルムを抱えて3等列車でカンヌ入りした1955年、夫のジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』を出品し、同作がパルム・ドールに輝いた1964年、前年に亡くなった夫の少年時代を描いた『ジャック・ドゥミの少年期』を出品した1991年の思い出を語るヴァルダのスピーチは感動的だった。

◆第68回カンヌ国際映画祭 受賞結果◆

【パルム・ドール(最高賞)】『Dheepan(原題)』(ジャック・オディアール監督)
【グランプリ】『Son of Saul(原題)』(ラズロ・ネメス監督)
【監督賞】ホウ・シャオシェン(侯孝賢)(『黒衣の刺客』)
【審査員賞】『The Lobster(原題)』(ヨルゴス・ランティモス監督)
【男優賞】ヴァンサン・ランドン(『La loi du marche』)
【女優賞】ルーニー・マーラ(『Carol(原題)』)
     エマニュエル・ベルコ(『Mon Roi(原題)』)
【脚本賞】ミシェル・フランコ(『Chronic』)
【カメラ・ドール賞(新人監督賞)】セザール・アウグスト・アセヴェド(『La tierra y la sombra(原題)』)
【「ある視点部門」監督賞】黒沢清(『岸辺の旅』)

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