【元ネタ比較】『クズの本懐』/中編
盲目状態よりも客観的な視点が残酷で切ないアニメ
一見理想的な高校生カップルの裏のドロドロな恋愛事情を、肉体関係も絡めて描いた横槍メンゴ原作によるコミック「クズの本懐」。TVでは放送しにくそうな原作がアニメ化、実写ドラマ化され、両方とも放送中だ。アニメ化はこれまでも良作を生み出してヒットさせてきたフジテレビの深夜アニメ枠『ノイタミナ』で放送されている。
キャラクターの声を花火は安斉知佳、麦は島崎信長と人気声優が担当し、絵柄のほんわかとユルいタッチの線もそのままで原作のイメージ通り。ストーリーもエピソードや脇キャラクターの割愛が多少あるものの、ほぼ原作に忠実と言える。
特に、ドロドロ恋愛なのに乾いた感触があるという、原作の持つ矛盾をはらんだ独特の空気感も漂わせていることに成功している。報われない想いを抱きつつ偽りの恋人と付き合い、これは想い人だと想像しながら偽りの相手と触れ合うことを繰り返す。やるせなくて息の詰まる作品世界だが、相手へのツッコミや自虐などの笑いや、相手にも自分にも諦めに似た開き直りがあり、重いだけのムードではなくフッと気の抜けた乾いた空気が感じられるのだ。同時に、自分を客観できる視点も持っていることで、そのほうが盲目状態よりもずっと残酷であることに切なさも感じられる。
この、表面的には生暖かくドロドロな物語なのにやけに冷たく乾いた部分は重要だと思うので、アニメでも再現されていて嬉しい。それはセリフだけでなく、ときどきインサートされるマンガのコマのような枠や、黒地にコマが浮かび上がるカットが、見ている側に一歩引いた客観視点の印象を与えるからかもしれない。アニメならではの効果的な演出と言えるだろう。(文:入江奈々/映画ライター)
(後編「〜体育館倉庫のお決まりシチュエーションに思うこと」に続く…)
『クズの本懐』アニメ版はフジテレビ“ノイタミナ”にて毎週木曜24時55分から放送中、ドラマ版は毎週水曜日25時55分から放送中。
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