松山ケンイチと芦田愛菜という人気絶頂の2人が共演した話題作『うさぎドロップ』。人気コミックを映画化した同作が、8月20日より公開となる。
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この映画は、いわゆる「イクメンもの」なのだが、主人公「親子」の関係はなかなかひと言では説明しにくい。「親」は27歳の独身サラリーマン・ダイキチ、「子」は6歳の女の子・りん。2人は法的には親子ではないが、血が繋がっていないわけでもない。
ダイキチがおじいちゃんのお葬式で出会った「おじいちゃんの隠し子(!)」がりんという設定で、2人は「叔母と甥」というわけだ。ダイキチが年上の甥で、りんが年下の叔母という、なんとも不思議な関係になる。
親戚一同、りんの存在を初めて知ったようで、葬式後は、母が誰かも分からないその女の子の処遇をどうするかでもめ、厄介者扱いされたりんへの同情から、ダイキチは自分が引き取ると宣言してしまうのだ。
かくして、彼女もいないのにパパになってしまったダイキチの奮闘が始まる。松山と芦田の息はぴったりで、次第に絆を深めていくその演技はかなりリアリティがある。舞台挨拶などで松山は、芦田のキュートさにとにかくメロメロになったと告白。撮影中は演技というより芦田と遊びながら作品を作っていったような気がする、まるで思い出アルバムのような「特別な作品」だったとも話しているが、そんな演技を越えた空気感が、スクリーンを通じて感じられる。
では秀作かと問われると、そうとは言えないところがなんとも残念。松山と芦田は二重丸なのだが、どうもテンポが良くないのだ。ダイキチの心象風景として挿入されるダンスシーンも微妙……。物語を盛り上げると言うよりも、ぶつ切りしている印象だ。
また、おねしょや病気になったりといった育児の大変さを描いたエピソードも、掘り下げ方が足りないためか、少々表層的で、主人公の苦労や心配が真に迫って来ないのだ。
せっかく「イクメン」を主人公にしたのだから、もう少しその大変さが、説得力を持って描かれたら良かったのに……とちょっと残念。心意気と頑張りだけでは何ともならないからこそ、世のワーキングマザーは苦労しているわけで、見ていて「そんなに上手くいかないだろう」と、つい突っ込みたくなってしまう。
もちろんこれは社会派ドラマではないので子育ての苦労を涙混じりに語る必要はないのだが、力のある作品はリアリティに欠けていたとしても、不思議と説得力があり、欠点も気にならず楽しめてしまうものなのだ。
この作品を、ハートウォーミングな感動作に格上げしてくれた松山と芦田、そして風吹ジュン、中村梅雀など2人を取り囲む人々を演じた名優たちに、プロデューサーや監督は大いに感謝すべきだろう。
『うさぎドロップ』は8月20日より渋谷シネクイントほかにて全国公開される。(文:ムビコレ編集部)
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