戦前、日本から遠く離れたカナダのバンクーバーで、差別や貧しさを乗り越え奮闘し、カナダ人から賞賛を浴びた実在の野球チーム“バンクーバー朝日”。その戦いぶりを通じて日系移民のドラマを描いた映画『バンクーバー朝日』が第33回バンクーバー国際映画祭でワールドプレミア上映され、主演の妻夫木聡と亀梨和也、監督の石井裕也が現地に赴き、レッドカーペットセレモニーなどに出席した。
上映中は現地の観客たちが熱い反応を示し、「GREAT!」「ラストシーンは本当に泣けました」などと賞賛。妻夫木は「きっと受け入れてくれると信じて今日ここにやって来ましたが、想像を越えていて、映画を見ながら応援する声や笑い声を聞いた瞬間に涙が出てきました」と感激し、「自分の出演作にこんなにパワーをもらったのは初めて。野球をうまく見せることよりも、いかに楽しんでいるか、彼らにとってどんな風に希望だったか、ということを自然と僕たちが体現できた」と自作について語った。
また亀梨も「改めて客観的に映画を見て、自分のなかで色々なものがさらに色濃くつながっていったという感じです。こんな映画に参加させていただいていたんだなあと、幸せに感じました」と感慨深げに語り、「チーム朝日のメンバーを演じたみんなとは今も親交があり、今日もみんなから『いってらっしゃい!』というメールをもらって来ました」と、撮影で育んだ深い絆を明かした。
この日はバンクーバー朝日で実際にプレーし、現在もカナダ在住の92歳、ケイ上西(かみにし)功一さんも駆けつけ、「この映画をつくるため何度も日本からカナダにおみえになり、私もインタビューに臨んだ結果、映画が出来上がり、このバンクーバー国際映画祭にて世界初公開されることを大変ありがたく思う次第でございます。また、朝日がカナダの時代の一点に加わったことを光栄に思う次第です」と語り、妻夫木・亀梨の選手ぶりについても「お2人とも上手にバントもできていましたね」と讃えた。
バンクーバー朝日はバンクーバーを拠点に日系カナダ移民二世を中心に、1914年〜41年まで活動。地元のアマチュアリーグに参加し、サムライ野球の原点ともいえる盗塁やバント、ヒットエンドランを駆使したスモールベースボールでカナダ人野球チームを打ち破り、西海岸リーグのチャンピオンとなり白人からも支持され人種の壁を越える象徴ともなったが、1941年の太平洋戦争勃発に伴い、「敵性外国人」となった選手と街の人々は強制移住され、チームは解散した。彼らが再び集まることは二度となかったが、半世紀以上たった2003年、カナダの移民社会、野球文化への功績が認められ、カナダ野球殿堂入りを果たしている。
『バンクーバー朝日』は12月20日より全国東宝系にて公開。また、第33回バンクーバー国際映画祭は10月10日まで開催中。
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