『イントゥ・ザ・ウッズ』
今日から公開される映画『イントゥ・ザ・ウッズ』は、『アナと雪の女王』や『マレフィセント』で従来の規定演技の外側へ踏み出したディズニーが、さらにその歩を進めたミュージカル作品だ。
原作は1987年初演のブロードウェイ・ミュージカル。『赤ずきん』『シンデレラ』『ラプンツェル』『ジャックと豆の木』といった誰もが知っている童話を“森”に集約させることで新たな世界を作り出した二幕ものだが、“ハッピーエンドのその後”を描いたその内容が現在のディズニーの求める世界観と交わり、“アフター・アナ雪”のディズニー像をより明確に打ち出すことに成功している。なお、この原作ミュージカルは日本でも宮本亜門の演出で2004年に初演されており、先の『アナ雪』のアナ役でミュージカル女優として一躍脚光を浴びた神田沙也加のミュージカル・デビューも、この『イントゥ・ザ・ウッズ』である。
本作の制作において核となっているのが、スティーヴン・ソンドハイムとジェームズ・ラパインのコンビによる楽曲と脚本であることは間違いないが、この2人については後述するとして、まず挙げておきたいのは、ロブ・マーシャル監督の仕事ぶりである。ブロードウェイでキャリアを積んだ後、ミュージカル映画『シカゴ』で監督デビュー。同じくミュージカル映画『NINE』などを手がけつつ、2011年には『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』という大ヒット作をものにしていることから、本作の映画化に抜擢されたという。ここではそんな経験のすべてが本作のためにあったかのように、複雑に入り組んだ物語を見事にまとめ上げている。
魔女役のメリル・ストリープや、オオカミ役のジョニー・デップ、そして本作で初めて歌声を披露したパン屋の妻役のエミリー・ブラントといったハリウッド・スターのほか、この映画ではミュージカル畑の役者も多くキャスティングされている。なかでもジャック役のダニエル・ハットルストーンと赤ずきん役のリラ・クロフォードという2人の子役の歌声が素晴らしい。
ダニエル・ハットルストーンはミュージカル映画『レ・ミゼラブル』のガウローシュ役、リラ・クロフォードはブロードウェイ・ミュージカル『アニー』などですでに高い評価を得ているが、ここでも両者は並外れたピッチの正確さやテンポ感のよさを発揮しながら、話しかけるように滑らかにスティーヴン・ソンドハイムによる楽曲を歌い上げている。(後編へ続く…)(文:伊藤隆剛/ライター)
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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