第68回カンヌ映画祭閉幕、予想を覆す受賞結果にブーイングも(前編)
5月24日(現地時間)に第68回カンヌ国際映画祭が閉幕、最高賞のパルム・ドールをジャック・オディアール監督の『Dheepan(原題)』が受賞した。スリランカの内戦で戦った兵士が、見知らぬ女性と少女を妻子と偽ってヨーロッパへ亡命し、暮らし始めたパリで再び日常的な暴力にさらされていく。第49回に『つつましき詐欺師』で脚本賞、第62回に『預言者』で審査員特別グランプリを受賞した常連監督が、第65回に出品した『君と歩く世界』に続く4回目の挑戦で、最高賞に輝いた。
日本映画、日本人俳優が出演する海外作品が数多く出品された今年だが、妻夫木聡が出演した台湾の『黒衣の刺客』(今秋公開)のホウ・シャオシェン(侯孝賢)が監督賞を受賞、前日に発表された「ある視点部門」の監督賞を『岸辺の旅』(10月1日公開)の黒沢清が受賞している。
審査員特別グランプリはハンガリーのラズロ・ネメス監督の『Son of Saul(原題)』。ハンガリーの巨匠、タル・ベーラの助監督をつとめてきたネメス監督はこれが長編初監督作だが、新人監督賞ではなく、いきなり審査員特別グランプリという大きな賞を受賞した。
審査員賞は、ギリシャのヨルゴス・ランティモス監督の『The Lobster(原題)』が受賞。
男優賞は『La loi du marche』のヴァンサン・ランドン。フランスのベテラン俳優の受賞を、会場はスタンディング・オベーションで讃えた。感無量のランドンは声を震わせながら、ステファン・ブリゼ監督をはじめ関係者、亡き両親に感謝の言葉を捧げた。
女優賞は『Carol(原題)』のルーニー・マーラと『Mon Roi(原題)』のエマニュエル・ベルコ。ベルコは今年の映画祭のオープニング上映作『La tete haute(原題)』の監督であり、第68回カンヌ国際映画祭のヒロインは彼女と言っていいだろう。
脚本賞はスペインの『Chronic』で監督もつとめたミシェル・フランコ。新人監督賞にあたるカメラ・ドール賞はコロンビアの『La tierra y la sombra(原題)』を撮ったセザール・アウグスト・アセヴェドが受賞した。(後編へ続く…)
・第68回カンヌ映画祭閉幕、予想を覆す受賞結果にブーイングも(後編)
◆第68回カンヌ国際映画祭 受賞結果◆
【パルム・ドール(最高賞)】『Dheepan(原題)』(ジャック・オディアール監督)
【グランプリ】『Son of Saul(原題)』(ラズロ・ネメス監督)
【監督賞】ホウ・シャオシェン(侯孝賢)(『黒衣の刺客』)
【審査員賞】『The Lobster(原題)』(ヨルゴス・ランティモス監督)
【男優賞】ヴァンサン・ランドン(『La loi du marche』)
【女優賞】ルーニー・マーラ(『Carol(原題)』)
エマニュエル・ベルコ(『Mon Roi(原題)』)
【脚本賞】ミシェル・フランコ(『Chronic』)
【カメラ・ドール賞(新人監督賞)】セザール・アウグスト・アセヴェド(『La tierra y la sombra(原題)』)
【「ある視点部門」監督賞】黒沢清(『岸辺の旅』)
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