【映画を聴く】『モダンライフ・イズ・ラビッシュ〜』前編
『モダンライフ・イズ・ラビッシュ〜ロンドンの泣き虫ギタリスト〜』は、プロのミュージシャンを目指す夢見がちな男と、彼との共同生活を支えるためにレコード・ジャケットのデザイナーになりたいという自分の夢を捨てて広告会社で働く女が別れの時を迎え、互いのレコード・コレクションを仕分けするシーンから始まる。
・相思相愛の細野晴臣×是枝裕和監督が、『万引き家族』で待望の初顔合わせ!
2人の出会いは10年前。レコード店でblurのベスト・アルバム『The Best Of』を買おうとしていたナタリー(フレア・メーバー)に、リアム(ジョシュ・ホワイトハウス)が「ベスト盤を買うなんて邪道だ」と話しかけたことがきっかけだ。blurの熱烈なファンであるリアムは、バンドの進化の過程を知るには1stアルバム『Leisure』から順に聴かなければいけないと主張する。
ベスト盤を聴いたぐらいでblurのことを分かった気になるな、というわけだが、それに対してナタリーは彼らのオリジナル・アルバムはすでに全部持っている、と反論する。彼女のお目当てはそのベスト・アルバムの初回限定版にだけボーナスCDとして付いてくるライヴ盤。つまり、ナタリーもリアムに負けないほどblurの大ファンだったわけだ。
そんな導入部に始まり、本作は音楽ファンにはたまらない小ネタがたくさん詰め込まれている。そもそも「現代社会はクズ(Modern Life is Rubbish)」というリアムの心情を代弁するようなタイトルは、blurが1993年にリリースした2ndアルバムから取られたものだし、主人公のリアムという名前はオアシスのヴォーカリスト、リアム・ギャラガーに由来するものだろう。
そしてblurやRadiohead、Spiritualized、Stereophonicsらの存在が、劇中で2人の過去を呼び起こすトリガーとしての役目を果たしていく。90年代のブリット・ポップを熱心に聴いた人にとっては、時代のサウンドトラックとして響くに違いない(後編へ続く)。
・後編「「現代社会はクズ」なのか? 音楽がデータとして消費される時代に思うこととは」に続く…
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