韓国映画の鬼才ポン・ジュノ監督の最新作『母なる証明』が10月31日から日本公開されるが、公開を前に来日した監督、キャストのキム・ヘジャ、ウォンビンが、27日に都内のホテルで記者会見を行った。
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知的障害があると思われる青年と、女手ひとつで彼の面倒を見ている母親の姿をとらえた作品で、青年が殺人事件の容疑者として捕らえられたことから物語は展開。息子の無実を信じる母が、真犯人を探すために暴走していく様子が、サスペンスタッチで描かれていく。ありがたくもあり、時に疎ましくもある母の愛が見る者の共感を誘うが、ウォンビンは、「劇中の母親も、実際の私の母親もそれほど違いはないと思います。私の母も、息子のためならすべてを投げ出すと思います」と母への思いを語った。
彼にとっては、兵役後の復帰作となる作品。子どものような純粋さを持つ青年を演じ、演技派への第一歩を踏み出した印象も受けるが、「上辺だけの純粋さにこだわると見る人にそっぽを向かれると思ったので、内面からにじみ出る純粋さにこだわって演じるよう努力しました」と語り、それが難しくもあり楽しくもあった点だと教えてくれた。
一方、息子のために力を尽くす母親を演じたのは、「韓国の母」とも呼ばれる大女優、ヘジャ。貧しい生活の中、苦労の耐えない母親の役について、「彼女は人間というよりも獣、それも手負いの獣のような存在。なんとしても子どもを守ろうと壮絶な戦いを挑む、そんな母親だと解釈して演じました」と説明。「撮影中は、ほんの一筋の光も入らない暗闇にいるような気持ちで撮影していました」と、精神的にも辛かった撮影を振り返った。
母親の気が触れたような表情が印象的だが、「そういう状況に置かれたことがないので、心理的には共感できてもどう表現すればいいか分からず難しかった」とヘジャ。そんな時、監督は、「例えば、焼きゴテで胸を突かれたら?」「ドライバーを頭にねじ込まれたら?」とニコニコして言い、ある種の演技指導をしたそうで、ヘジャは「それを聞くと、自然と体が硬直して、悲鳴すら出せない状況になりました」と、監督の巧みな手腕について語った。
監督は、素晴らしい演技をすると、賛辞をメールで送ってくれたという。「私はこれまで携帯電話でメールを送ることなんかできなかったのですが、監督が携帯を買ってくださり、使い方も教えてくれ、何か演出の指示を出すときもメールでくれたりしました(笑)」と、意外な撮影裏話を教えてくれた。
映画は、キム・ヘジャ演じる母親の、ぎこちない不思議なダンスで始まるが、「キム・ヘジャさんには魂のぬけたようなうつろな表情で踊っていただきたいと話しました。なぜならその表情は、映画全体を予告し、狂気を感じさせる宣戦布告にしたかったから」と、演出の意図を明かした監督。だが、真っ昼間に1人で踊るのは恥ずかしいと躊躇したヘジャのために、実は、カメラの後ろにいるスタッフも全員踊って撮影していたのだという。監督は、「プロデューサーや助監督や私も一緒に踊りながら、彼女に『手を挙げて、ここで回って』と指示を出していました」と笑い、「メイキング映像では、その風景がご覧になれると思います」と話していた。
映画についてウォンビンは、「多くの方の心に残る作品になってくれれば嬉しい」と語っていた。
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