やっぱりビートルズは別格。すでに記録&記憶の両面で十分すぎるほどエスタブリッシュされたグループだし、その偉大さは後追い世代の自分(1973年生まれ)が言うまでもないものではあるけれど、ごく身近でそのマジックの効力を目にすると、改めてそんなふうに思ってしまう。たとえばうちの5歳になる娘。2歳の時に聴かせた「ミスター・ムーンライト」のジョンのシャウトがよほど衝撃的だったのか、その後半年くらい「ポール、リンゴ、ジョン、ジョージ。ポール、リンゴ、ジョン、ジョージ……」と何かのおまじないのように唱えていた(『ビートルズ・フォー・セール』のジャケットを見ながら名前を教えたのでこういう順番になりました)。いまはもうちょっとツボがマニアックになってきて、「A HARD DAY’S NIGHT」のジョージのギター・ソロにさしかかると「ギター早いね!」とか指摘してくる。まあ、「ここのソロはジョージも弾くのが難しかったから、テープスピードを落としてキーも下げて弾いてるんだよ」みたいなウンチクはあと5年くらいまで控えようかな……なんて思いつつ、その吸引力の強さにびびっている。
で、先ごろリマスター版Blu-ray/DVDがリリースされた映画版『A HARD DAY’S NIGHT』の話。当時、日本ユナイト映画に在籍した故・水野晴郎氏が考案したものと言われる『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』という邦題こそ最近使われなくなったものの、この『A HARD DAY’S NIGHT』はビートルズの映像作品のなかでは現在でもひと際高い評価を得続けている。いまだに日本ではまともにDVD化すらされていない『レット・イット・ビー』はもちろん、同じリチャード・レスター監督による『ヘルプ!(4人はアイドル)』と比べてもその人気と評価は圧倒的だ。この『A HARD DAY’S NIGHT』において、レスター監督はストーリーらしいストーリーを特に用意せず、ビートルズを本人役として登場させ、スラップスティック・ギャグを散りばめたアイドル映画らしからぬ映画に仕上げた。エルヴィス・プレスリーら先達の主演映画を例に挙げるまでもなく、アイドル映画と言えば“ボーイ・ミーツ・ガール”的な要素が不可欠だったであろう当時にあって、4人の持つユーモアや知性を限りなく素のまま活かして30〜40年代のマルクス兄弟のようなスラップスティック・コメディのノリを再生してみせたレスター監督の手腕は、公開から50年が経ったいまも色褪せていない。…後編へ続く(文:伊藤隆剛/ライター)
『A HARD DAY’S NIGHT』ブルーレイは好評リリース中(初回限定版6800円/税別、通常版4800円/税別)。
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