誰も口にしなかったカンヌ受賞の裏側
ナイーブなイケメン路線を崩さず沈滞だったが…
「今、柳楽優弥から目を離せない!」、深夜にそう熱く思っている人は少なからずいるであろう。
柳楽優弥と言えば、なぜか申し訳ない気持ちでいっぱいになるが、「14歳のときに『誰も知らない』で第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞し、一躍スポットライトを浴びた俳優」がやはり一番に思い浮かぶ。申し訳なく思うのは、10年経った今もそのイメージを超えるものが思い浮かばず、その看板があまりに華々しく巨大なために本人も苦悩してきたことは周知の事実だからだ。急性薬物中毒で病院搬送されたり、精神的なことが原因なのか激太りしたり激やせしたり、傍観しているだけでも痛々しく同情してしまう状況だった。
そもそも『誰も知らない』を見た人は、口に出さないまでも、これは彼の演技力よりもカメラの前で自然体でいることを引き出した是枝裕和監督の手腕が大きいだろうと感じていたはずだ。その証拠にというか、当時取材した筆者の前でも、彼は是枝監督に指示されながら「いっしょうけんめい、がんばりましたー!」とニコニコと棒読みで答える、ごくごく普通の男の子だった。
『誰も知らない』の後の柳楽の出演作は、夭折した象使いの少年を演じた『星になった少年 Shining Boy & Little Randy』、山田詠美原作でほろ苦い初恋を描いた『シュガー&スパイス 風味絶佳』、『永遠の仔』の天童荒太原作の映画化『包帯クラブ』などが続く。柳楽は『誰も知らない』のイメージを崩そうとはせず、むしろイメージにすがるように感動や繊細さや純粋さを打ち出せる作品を求めた。
しかし、結果は鳴かず飛ばずといったところ。そして、彼は前述したように痛々しい迷路に迷い込んでいく。筆者としては半ば同情しながらも、どうしても透明感あるカッコイイ路線からはずれたくないのかなぁ、とじれったく思う気持ちがあった。顔は濃すぎるし爽やか系は狙えそうにないんだから、いっそ気持ち悪い役をやればハマるだろうに、と。
そう思っていたところ、おっこれは、といい兆候を見せたのはクリント・イーストウッド監督作をリメイクした『許されざる者』でのアイヌ出身の青年役だ。ワイルドというか土着的というか、髪はボサボサでヒゲはボウボウで臭ってきそうなほど汚い出で立ちは、これまでのイメージを一新するものだった。…後編へ続く(文:入江奈々/ライター)
【関連記事】
・【この俳優に注目】焔モユルがハマりすぎ!『アオイホノオ』の柳楽優弥から目が離せない/後編
・映画化が相次ぎ脚光を浴びる作家・佐藤泰志、ブームの火付け役が語る苦難の道
・父・ジョージ秋山の原作マンガを映画化した秋山命が語る、父への思い
・【この俳優に注目】単なるセックス・シンボルでは終わらない卓越した才能をもつ天才女優
・『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『名探偵コナン』…子ども向け映画シリーズの長寿の秘密
PICKUP
MOVIE
INTERVIEW
PRESENT
-
『型破りな教室』一般試写会に10組20名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.29 -
山口馬木也のサイン入りチェキを1名様にプレゼント!/『侍タイムスリッパー』
応募締め切り: 2024.11.15